『優弥。今日からこの人が新しいお母さんだ』



『………』



最初からあの人の印象は最悪だった。



あの人は俺を見るなり嘲笑うかのように鼻で笑った。



母親が出来たと言っても普段と全く変わりはなかった。



あの人は家にいるのにかかわらず母親らしい事も主婦としてのやる事も一切せず、フラフラと家を出て行ったと思えば何日も帰ってこず、またフラフラと帰って怠惰に過ごす。



あの人は犯罪歴があり、その事件があった時に大々的にテレビに放送されていて、その事から世間から知られた人物で多くの人間から怖がられいるので、どこにも雇ってくれる人もいなかったのだろう。



後で父さんに聞いたが、あの人の結婚は最初から嫌だったらしく、父さんはあの人に付け入られて無理やり結婚に至ったらしい。



単に生活出来るお金が欲しかっただけだったのかもしれない。



あの人が犯した事件の事は、父さんやネットで聞いたり見たりしただけで詳しくはよく知らない。



なんせ俺が生まれる前の事件だったので。



だけど、あの人が犯した事件というのはとても残虐的で非道なものだったんだ。




だからなのか、父さんは最初とても俺に対して心配していた。



父さんはいつも俺に、『あの人には気をつけろ』と言っていた。



その頃の俺はまだあの人が犯した事件の事は知らずにいたが、でも最初出会った頃からあの人に対する異様な空気は異常で恐ろしいものだと感じていた。



最初の1年はまだ大人しいものだったのかもしれない。



だけど、2年になった頃から激変していった。



する事やる事は最初から変わらなかったが。



最初俺に対しては基本無視で空気のような存在でしかなかった。



だけど、あの人は俺に対して命令や罵倒するようなった。



ただ、や暴力する事はなかった。



その行為は段々激しくなっていき、次第に父さんにも向けるようになる。



いつしか穏やかな空気は冷たい張り付いた空気へと変わっていった。



父さんはいつも悔やんでいた。



俺はどうにかしてあげたい、どうすれば離婚出来るのか、そんな事をいつも考えていたのだった。



だけど、父さんがどんなに離婚を申し立ててもあの人が承諾する事はなく、するものなら一層の事殺してやると脅していた。



うちは貧乏ではないが、あの人は金遣いが荒く毎月父さんがあの人に決められた金額を貰っていたが、すぐに使い切ってしまっていた。



だけど、どんなにせがまれても追加の金額は渡す事はしなかった。



そのせいか、生活費とかもろもろ消えていた事があった。



1年目の頃はそういう事はなかったが、2年目からそういう盗みみたいな行動が出始めた。