「あの人、お母さんに何するつもりだったんだろう」



「…………」



あの人の姉である美沙樹のお母さんはあの人と違ってとても良い人だ。



あの人と姉妹だなんて嘘だと言いたいくらいに性格が違いすぎる。



「今までこんな事なかったのに」



今までなかった。



もし美沙樹のお母さんに何かあるとしたら、もしかして……。



あの人は美沙樹は知らないのだろう。



美沙樹のお母さんはおそらく美沙樹に何も伝えていないのだろう。



ずっと隠していたという事だろう。



以前、犯罪歴があって住民から恐れられている事に。



だけど、軽い判決に下って短い懲役で終わっているんだ。



父さんと結婚した後は大人しくしているようだが、父さんと結婚前も何かの罪を起こしたと父さんに聞いている。



でも、その事件があの人だという判定は出来て居らず、単なる憶測である。



「あの人、また来たりとかしないよね?」



「………」



それは、俺が断定する事は出来ないと思う。



なぜなら、分からないからだ。



あの人は何を思って何を考えて行動しているなど、一度も理解出来なかった。



美沙樹はあの人に対して、とても恐怖心を抱いているらしく、俺と同じく…いや美沙樹のお母さんも同じ気持ちだろう。



「もう来ないでほしい」と。



「大丈夫だよ、きっと」



俺は少し無責任だったのかもしれない。



大丈夫だと言い聞かせて安心感が欲しかったんだと思う。



「本当に?」



「うん」



「そうだね」



嫌な予感が多少あったのかもしれない。



それでも、この時はまだ大丈夫だと信じていたかったんだと思うんだ。


結局、夕食をご馳走になる事なく家に帰った。



家に帰って私服に着替えすぐにスーパーへと出向いた。



「今日は何しよっかな」



どうせ今日も父さん遅いからコンビニでも良かったけど、スーパーの方が安いし作った方が栄養的に良い気がする。



父さんはあまり健康に気を使わないタイプだから、俺が管理してあげないとすぐ肥満体質になってしまうから作ってあげといた方が良い。



まあと言っても、肥満ではなく普通体型だけど。




「………」



俺の母親は俺が7歳の頃に事故で亡くなっている。



顔は父親要素がまったくなくかなりの母親似である。



若い頃の母親と俺は瓜ふたつと言うぐらいに酷似している。



父親とずっと2人で暮らしていたが、今は昔の生活に戻ったけど父親との暮らしは正直言って色々大変だったりするけど、それでもあの人が現れるまで平和だったのかもしれない。



俺の事や他の問題を除いて父親との生活に関しては平和だった。



中学に入学したばかりのある日、父さんは突然あの人と再婚すると言ってきたのだった。