私は無我夢中でその場から逃げ家の外に出ていた。



気が付いた時には、公園のベンチでこじんまりした体勢で座り込んでいた。



「ーーっ」



震えが止まらない。



知らないはずなのに、何かが私の心を恐怖にさいなまさせられる。



(これは何? 何なの?)



あの人は本当にお金を貰うためだけにやってきたのだろうか?



他にも何か考えがあったのでは…?



お母さんとはどういう関係なんだろう。




お母さんはどうしてあんなにも怒って怯えているのだろう。



あんなにも乱すお母さんは初めて見た。



私は震えるだけでそこから動けずにいたのだった。



「美沙樹!」



「あっ」



声に顔を上げると、葉月くんが私の顔を覗かせていた。



「!」



「大丈夫か?」



「………」



私は返事をする事が出来なかった。



「美沙樹?」



「家に戻って」



「えっ」



なんとなくだが、戻ってもらわないといけない、そんな嫌な予感がした。



だから私は、葉月くんに゛戻って゛とお願いした。



だけど、葉月くんはすぐに私のお願いを拒んだ。



「そんなの無理だよ。
今の美沙樹を残していくなんてっ」



「いいから戻って!」



拒む葉月くんに、私は強めに言い放った。



「!?」



「少ししたら私も戻るから…」



私の言葉に目を丸くしていたものの、渋々と承諾して葉月くんは私を残して公園を後にしたのだった。



葉月くんは私が変だって事を気付いていたと思う。



だけど、彼は゛大丈夫?゛しか言わなかった。



「あの人は一体誰なの?」



見憶えのないのに私の感覚が知っている感じがするのはなぜだろう。



怖くて仕方ない。



頭を抑えて、恐怖心をかき消すようにうつ向く。




しばらくして、ようやく心が落ち着きを取り戻し、立ち上がり公園を出ようとする。



と、あの人がこちらに向かってくるのに気付き、咄嗟に物陰に身を隠した。



「……っ」



数秒が経ち、物陰からそっと体を覗かせ公園の入口へと向かった。



「はあーよかった。もういない…」



あの人は私に気付くことなく、公園を通り過ぎてくれたようだ。



出来ればもう、あの人には出会いたくない気持ちがあった。