私は駆け足で家に戻り、ゆっくりと玄関扉を開け2階のリビングへと入る。
「お母さん?」
低い声でそっと呼ぶとお母さんが現れた。
私の姿にお母さんはひどく驚き抱きついてきた。
「お、お母さん?」
「よかった…何ともなくてっ」
お母さんは安泰した声でほっと胸を撫で下ろした。
心配してくれたんだ。
でも、なんかいつもと違うような。
(どうしたの? 一体、それに…)
ふとお母さんの右手に包帯が巻かれている事に気付く。
「お、お母さん!? 手ケガしてる!
もしかして、あの人に?」
「大丈夫よ」
「………」
私は意を込めてあの女の人の事を尋ねてみた。
「お、お母さん…あの人、誰なの?私知らない人なのに、知っているような感覚があったの。それに、すごい恐怖感にあおられた」
「………」
そう問い詰めると、お母さんはあの時見せていたとても辛そう顔をしていて、そして決心したように口を開く。
「あの人は心宮 美実(ここはら みのり)といってね…私の妹よ」
「えっ…お母さんの妹?」
「そう」
(妹…)
初めて聞いた、戸惑いながらもお母さんの口から聞く家族の話。
お母さんに妹がいたんだ。
そういえば、一度だけちゃんと教えてくれた事があった。
それがお母さんの血の繋がりで唯一頼れる人は従姉妹だけだって言ってたけど。
それなのにあの人は……。
姉妹なのにあの態度はなんでだろう?
「私は、あなたに今まで実家の事教えた事ないでしょ」
そっとお母さんは低い声で言う。
「う、うん」
「それは、心宮という家が嫌いだからよ。あの子が居たからすべて崩れたのよ。そして、消された…全部」
「えっどういう意味?」
「響には、知ってほしくなかった」
お母さんは、苦しそうな表情をしながらうなだれる。
私はそれ以上、何も言えなかった。
あの人が帰ってくれたのは、葉月くんがお金を差し出してくれたからだそうだ。
お母さんの右手のケガは、あの人にナイフを刺されたらしい。
案の定、あの人は葉月くんのお父さんの離婚相手の人だった。
そして、お母さんが「逃げなくちゃ」と低い声で呟いたのだった。
その声があまりにも悲痛に聞こえた。
「お母さん?」
低い声でそっと呼ぶとお母さんが現れた。
私の姿にお母さんはひどく驚き抱きついてきた。
「お、お母さん?」
「よかった…何ともなくてっ」
お母さんは安泰した声でほっと胸を撫で下ろした。
心配してくれたんだ。
でも、なんかいつもと違うような。
(どうしたの? 一体、それに…)
ふとお母さんの右手に包帯が巻かれている事に気付く。
「お、お母さん!? 手ケガしてる!
もしかして、あの人に?」
「大丈夫よ」
「………」
私は意を込めてあの女の人の事を尋ねてみた。
「お、お母さん…あの人、誰なの?私知らない人なのに、知っているような感覚があったの。それに、すごい恐怖感にあおられた」
「………」
そう問い詰めると、お母さんはあの時見せていたとても辛そう顔をしていて、そして決心したように口を開く。
「あの人は心宮 美実(ここはら みのり)といってね…私の妹よ」
「えっ…お母さんの妹?」
「そう」
(妹…)
初めて聞いた、戸惑いながらもお母さんの口から聞く家族の話。
お母さんに妹がいたんだ。
そういえば、一度だけちゃんと教えてくれた事があった。
それがお母さんの血の繋がりで唯一頼れる人は従姉妹だけだって言ってたけど。
それなのにあの人は……。
姉妹なのにあの態度はなんでだろう?
「私は、あなたに今まで実家の事教えた事ないでしょ」
そっとお母さんは低い声で言う。
「う、うん」
「それは、心宮という家が嫌いだからよ。あの子が居たからすべて崩れたのよ。そして、消された…全部」
「えっどういう意味?」
「響には、知ってほしくなかった」
お母さんは、苦しそうな表情をしながらうなだれる。
私はそれ以上、何も言えなかった。
あの人が帰ってくれたのは、葉月くんがお金を差し出してくれたからだそうだ。
お母さんの右手のケガは、あの人にナイフを刺されたらしい。
案の定、あの人は葉月くんのお父さんの離婚相手の人だった。
そして、お母さんが「逃げなくちゃ」と低い声で呟いたのだった。
その声があまりにも悲痛に聞こえた。


