あれは、葉月くんにとって最大の自分の想いだった。


私の事をなぜ好きになったのか分からないけど、葉月くんの感情も全然分からないけど、分からない事だらけだけど。



でも、でもでもでも…私ができる事なんて限られてるから。


これしかない。


「あのね、葉月くん…!」


「ん?」


「私ね、あなたを助ける事はできるかな?」


「はっ?」


自信なんてこれぽっちもない。


言ってる事だって、何言ってるんだと思う。


けど、これしか思い付かないからしょうがないじゃない。


「別に話さなくたっていい。どうせ話してくれないなら、いらない。でも、葉月くんにどんな事があったって絶対に見捨てたりしないから。私が葉月くんの事を理解できるようになってみせるから。だから、いつか助けてあげたいの」


「………」


「私は絶対に酷い人間だって思わない。ずっとずっと葉月くんの味方でいたいの! …助けれるかわかんないけど、全然自信ないけど…この想いだけは嘘じゃないから…ううっ」


(ダメだ…また泣いちゃう)


葉月くんは唖然とも呆然ともする訳もなく、ただただ切なく哀しそうだった。


「自信ないのにそういう事言う? 普通、言わないでしょ。…さっきまで逃げてた癖に」


「…だって、なんで私の事好きなのか全然分かんないけど」


「分かんないのかよ」


「でも、それは葉月くんの本心の感情だって気づいたから」


嘘偽りじゃない本心だから、それだけは分かったんだ。


「……そうだけど、本心だよ。だからこそだよ、理解するって事は傷付く事と一緒なんだよ。…俺にとってはさ」


「………」


私は守られてきたから、誰かによって傷付いた事なんてない。


美実さんの事も最初すごく怖かったけど、あの人の事をお母さんやおばあちゃんから知った時、『ああ、あの人は悲しい人なんだな』って思った。


怖さなんかどこにもなかった。


怖いのは心の中だから。


会いにいけないのは、それが理由だ。


理解をすればおのずと見えてくるから。


見えないものがはっきりと。


でも、葉月くんは違う。


理解してほしいけど、理解してほしくない。


そういう人だ。


だったら、自分から手を伸ばすしかないじゃない。


(ねえ、そうでしょ?)