どうしてそういう事が言えるのだろう。


(ああ、でも…そっか)


理由がなんとなくわかった気がした。


「それは、白石さんの事があるから?」


一応、かじる程度に教えて貰ったが、詳しい事は聞いてないから知らない。


原因があるとしたら白石さんだろう。


「…そうだね」


葉月くんはなぜかクスっと笑って頷いていた。


(なんで笑ってるの?)


葉月くんの反応は時々よく分からない。


心が変な人は感情の情緒がおかしいのだろうか?


そもそも私は葉月くんの感情に何があったか知らないし、美実さんの事も何があったのかもしれない。


大雑把な事の説明だけで、ほとんど知らない。


「でも、気持ちを伝えられたって、私は何も葉月くんの事を知らないのに。どうせ葉月くんは知ってほしくないんでしょ」


「まあ、そうだけど。でも、昨日言ったじゃん。少しなら教えてあげるって」


確かに言ってくれた。


でも、それは…表向きのことなのだと思う。


「例えばどういうの?」


「昨日、言ったやつだよ。趣味とか好きな物とかそういうの」


「……そう」


表向きの物だったら何度だって教えられるけど、中身は教えられないんだ。


「ごめんね、だって…嫌なんだから。無理なものは無理。きっとさらけ出した方が辛くなくなるかもしれないけど、俺のメンタルが耐えられないんだよ。人に知られる程 恐怖なものはないよ。けど、理解しようとしない人は滅べばいいと思う。腐った考えしできないんだから、生きてる意味があるのかって思うよ。知ってる? 偉そうな人間程 頭ん中 腐ってんだよ」


「……っ」


今、また見えた。


葉月くんの体から暗黒で薄暗いオーラがはっきり見えた。


彼の心ってどうなってるのだろう。


聞こえたらいいけど、おそらく聞こえない方がいい。


葉月くんが知られたくないのは、そういう黒い自分を見せたくないから、あえて自分を言わないのかもしれない。


葉月くんなりの気遣いだ、これは。


そのぐらい心の中は真っ黒なんだ。



「あ、ごめんね。…ほら、俺って心の中 汚いからさ」


「………」