「まあ、いいかもう」


「………」


私は信じる気がないのだと確信したのか、葉月くんはとうとう諦めたのだった。


(だって、ありえないんだもん)


「でも、だからしたの?」


「それもあるけど」


葉月くんはどこか含みを見せる。


さっきからどうもまわりくどさを感じるのは気のせいではない。


葉月くんは躊躇したり隠したがる性質だっていうのは理解している。


理解しているけど、あまりにも言ってなさすぎるから少しだけムッとなる。


「何か言いたい事があるなら言ってほしいのだけど」


「……そう? じゃあはっきり言うね」



私がそう言うと、葉月くんは何の躊躇も消すようにはっきりと言い始めた。


葉月くんはよく分からない。


躊躇したり、かと思えば率直に言ったり、やっぱりよく分からない。


「ただ伝えたかっただけだよ」


「ただ…」


それは、気持ちを知ってもらいたかっただけなのだろうか。


決して意味は持たない、そういう事なのだろう。



(つまり、私も同じ気持ちになってほしいってそういう事なのかな)


でも、私は恋愛とかそういうの漫画やゲームやドラマの世界のように見えて、私自身ではありえないって、そういう自分を想像する事さえ嫌。


だって、そんなの想像なんてできない。


知らないものだから想像なんてできないから。


(ああ、そうか)


この時、ある考えが脳裏に走った。



(そっか、そうなんだ)


知らないからみんな理解しようとしないんだ。


私も他の人も…みんな。


知らないから分からないから理解できないんだ。