願う先にある想い

「ねえ、美沙樹。言ったよね、俺から逃げないって。
その言葉よく覚えておいてよね」



「えっ」



葉月くんは突然迫るように顔を近付けてくる。



私は思いもしない行動に硬直になっていた。



「…っ」



(えっ!?)



またキスされた。



けど、すぐに離してくれた。



「あ…わわ…」



「美沙樹のその反応まじ面白いな」



「これははお礼じゃあ…」



そもそも昨日のもお礼じゃないし。



「お礼だよ、どう考えても」



「!?」



壁に追いやられ、今度は深くまで押し込むようにキスされる。



(ちょっ…まずいってそれは…それはダメだよ)



「はあ…はあ…はっ…」



「……やっぱり美沙樹はかわいいね」



「っ…こういうのって良くない」



あれは昨日だけの話で、今日もするなんて聞いてない。



「そう? …別に気持ちを伝えるだけで終わると思ってた? まさかね。…付き合いたいと思わないけど、誰かのものにはなってほしくないから」



「欲張りじゃない?」



「ふーん、じゃあ美沙樹は別の男とこういう事できる?」



ぐさっと来る一言を言われてしまった。



けど、葉月くんの言う通りなのは確かだ。



「…それは嫌。男の子 苦手だもん」



「だったら、いいでしょ?」



そう言って、葉月くんは私の手を取る。



ていうか、これ…ある種の脅迫だ。



という以前に、この前の事と何一つ変わらないのだけど。



「脅しだよね、これ」



「うん♪」



しかもあからさまに開き直った。



男の子は苦手だけど、葉月くんは特別だから大丈夫な訳という結論に至っているから。



拒否する理由が見つからない。



葉月くんを理解する為に助けると約束したはずなのに、別の方向のものまでこじつけらてしまった。



これが世に言う策士なのだろうか。



「あーお腹空いた。そういや、お昼まだなんだよね、美沙樹を追いかけてきたから」



「私のせいだって言うの?」



「うん♪」



また悪魔の微笑みが…降臨した。



このままだと、葉月くんのペースに振り回されそうだ。



「葉月くん! 言っておくけど、私は納得してないから! あと、約束してないよっ」



「………」



「私は怒っーー!? ちょっと!」



そう注意したものの、葉月くんは私の言葉など聞きもせず、私に手を伸ばしてき頬に軽く口を付ける。



「はっ…葉月くん!!」



「回避できるのならしてみたら、すれば?
どうせできないだろうけどね」



「…っっ」



その時の葉月くんはとても嬉しそうな顔で私をからかっていた。



そして、葉月くんは先に屋上庭園を後にしたのだった。