「っ!?」


葉月くんは一向に迫る事を止めなかった。


葉月くんの左手が私の頬をそっと触る。


「なっなななっ…何して…本当に本当にダメだって!」


私の懇願は先程から全てを無視されている。


というか聞く耳を持とうとしないような。


「葉月くん! 聞いてる!? 聞いてないよね!」


「大丈夫だって♪」


(何がー!?)


「ねえ、美沙樹ー」



全然聞いてくれない。


しかも、先に進めようとしている。



「この前のお礼 思い付いたんだ」


「えっお礼?」


そういえば、この前葉月くんと出かけた際、キーホルダー買ってもらったから、私も何か見返しとしてお礼をしたいと言ったんだった。


でも、考えとくと言ってからは何も言うことなく過ぎていったから。


「そうなんだ…」


でも、なんで突然に




こんな至近距離に近付いて何をしようと言うのだろうか。


(いや、本当に何するの!?)


「ねえ、一体何するの?」


「ん〜? 大丈夫だよ、酷いことじゃないから。前みたいに」


(前って何?)


以前もされた事をしようとしているって事?


(それって何!?)


ようやく私の会話に答えてくれたと思いきや、困惑するような言葉を放たれた。


「…ちょっちょっと…だめだって…本当に」


頬をなぞるように指が動き、絡まれている手に力が入る。


「……っ…いや」


「大丈夫だって…怖い事じゃないから」


葉月くんが私にやることなどロクな事じゃないって、以前思い知らされたから、絶対にロクな事じゃない。


「…っ」


葉月くんの顔近付いて、おでこにコツンとくっつく。


「っっ!? …なっ」



「大丈夫だから…ねっ?」


(大丈夫って…何が?)


葉月くんの言葉に困惑しつつ、なぜか彼の言う言葉に安心感をもたらしていた。