「ちょっ…ちょっと待ってー!!?」


さすがに近すぎて感情を正常にできる程余裕が出来ない。


「近い!近いって…ど、どいて…っ」


顔がみるみると赤くなるのが分かる。


「…っ」


あまりにも近すぎて、どこに向けたらいいのか分からない。


「顔真っ赤」


「っっ」


本当にこれはどういう状況なんだろう。


とてつもなく困るのだけど。


けど、葉月くん本人は、あたふたして顔を赤らめている私を見てクスクスと笑っているだけだった。


「そうだよね〜美沙樹は今まで男子とまともに関わった事ないもんね」


確かにそうだけど…。


友達もそうだけど、連絡先知っている男の子も葉月くんが初めてだし。


それよりもそれよりも。


(この状況は本当に無理ーー!?)


心が別の意味で爆発しそうだ。


「…は、葉月くん…ほ、本当に…無理。…だからあの…離れて…っ」


心臓が持たなく過ぎて、声が震え声になる。


「かわいいな、もう」


(まったく、聞いてくれない!!)


葉月くんの耳には全く通っていないのか、むしろ噛み合いもなく褒められていたりもする。


「は、葉月くん…!?」


「あーもう…大丈夫だよ。そんなに怖がらなくなくても」


(怖がっているのではなくて、困惑しているんだってば)


ようやく通じたと思ったら、やっぱり全然噛み合っていなかった。


(おかしい…葉月くんおかしすぎる…!!)


いつもの葉月くんじゃない。


いつもの葉月くんもおかしさはあるけど、それ以上のおかしさを感じる。


おかしくても常識のある人だから、こんな突然迫ったりはしてこないから。


そんな人じゃない…。


(ん? …そんな人じゃない…?)


ふと脳裏に流れた葉月くんが以前私にした事を思い出す。


いや、でもあれは…私が隠し通していたせいで。


(あ、ありうる…)


葉月くんは意外と迫る事に億劫しない人だった。