「ねえ、どうしたら自分の心のあるものや他人の想いを理解できるのかな?」


クッションをぎゅっと抱き、顔をクッションに付ける。


「………」



傷付いた感情を理解できる程理解力がない。


心の中を聞こえても、それを理解できるかと言われると難しい。


「…そんなの理解する方が難しいよ。自分の心も他人も理解できるなら悩んだりしないし苦しくない」


「…そうだね」


そのとおりだ。


けど、だったらどうすれば理解が出来るようになるのだろう。


「知ってる? 自分の恐怖って結局は自分なんだよ。理解できない人は自分も他人も理解できない。
…つまり母さんが言っていた事はそういう事なんだろうね」


「…そうだね…うん」


葉月くんのお母さんが夢に出てきた時、私に言っていた言葉と同じだ。


自分を理解できないと相手も理解してくれない。


それと同時に自分を理解できないと相手も理解できない。


同じだ。


同じなんだ。


私の体勢が次第にまん丸くなる。


クッションを抱き締めたまま顔を付けて、足をソファに上げる。


三角座りのような体制になる。


一応、中に見えても大丈夫なのは履いてるから大丈夫だけど、手の腕を使ってはでぎゅっとスカートで隠す。


「天仲さんに何を言われたの?」


「……」


何もないって言ったら嘘だと思われそうだ。



でも、さっき私は話そうと思ったんだった。


意を持ってようやくして顔を上げて、葉月くんのいるテーブルの方へと目を向けた。


葉月くんはソファには座っているのではなく、テーブルの端の方で座布団を置いて座っていた。



「あのね…」


「うん?」


「それは、恐怖の感情と似てるもの?」


「!」


その言葉に私はコクンと頷いた。


「あのねー」


やっぱり私、葉月くんには…葉月くんを理解したいんだ。


ここあさんが言っていたように、知らない何も変わらない。


葉月くんは無理でも私が知ればいいじゃないかって思う。


だったら、私が思っている事を伝えたらいいんだ。


私は葉月くんに知って貰いたいんだ。


確かに私は嘘をつけない性格でも、誰にも言えない事はある。


けど、彼にだけは言えたから。


だから、葉月くんは特別なんだって思えるようになったんだ。


私はここあさんに教えられたことを葉月くんに話したのだった。