「まあ、天仲さんの言いたい事は分かるんだよね」


さっきのここあさんが葉月くんが言っていた事だろうか?


でも、ここあさんは何を葉月くんに伝えたいのだろうか。


「ねえ、葉月くん。ここあさんは何を伝えたいの?」


「……聞いてないの?」


「えっうん」


葉月くんの事を気にしているのは知っていたけど、何の為なのかは分からない。


「あーあの人は美沙樹の家の事情を知ってほしいんだって」


「えっ」


「美沙樹もまだ教えて貰ってないんだよね?」


「う、うん」


そういえば、まだ心原の事を教えて貰っていない。


教えて貰ったと言えば、狂気の感情や夢の事だ。


それもつい先日の事だ。


「でも、ここあさんはなんで話そうとしてるの?」


「さあ? でも、理由はなんとなく分かる。俺の性格がこんなんだからさ」


(あ、そっか)


葉月くんの心が歪んでいて異常なのは分かるけど、けど、私には分からない何かがこあさんには感じているかもしれない。



「躊躇…してるのは事実だけど、でもな」


「聞きたくないの?」


「いや、知っても損はないと思うよ」


「けどな〜」


気持ちに踏み込めないのか、はあと溜息を付いている。


「まあ、うちの親戚が異常なのは理解してるし、もしかしたら、他所の事情を知ったら何か変われるものがあれば良いとは思う。けど、けどな他所様の事情を知るのは正直躊躇がある」


ここあさんが言っていた事と躊躇している葉月くんの理由はこれだったんだ。


確かにそれは言えるかもしれないけど。


でも、私の場合はここあさんや美実さんの存在以前に心原の事も何にも知らなかった私はどうなるのだろう。


そうなるとよく分からない立ち位置だ。


「それ以前に俺がおかしいし、すぐに治る事もできないし。何一つ解決出来てないからな」



私は正直葉月くんの事をあまり理解できていない自分がいるのも確かだ。