「あ、キャラメルの味だ」


紅茶のフレーバーはキャラメルティーだった。


キャラメルの紅茶を飲んだのは初めてだったけど、ほんのりした優しい甘い香りが引き立ってとても美味しかった。


「美味しい?」


「うん、すごく。キャラメルの紅茶があるんだ」


「市販のフレーバーティーだよ」


「へえ」


葉月くんは選ぶものまでもがセンスがいいんだ。


「……」


前々から薄々気付いていたけど、葉月くんは基本的に何でもできてしまう人だ。


こういうのを天才って言うのだろうか?


容姿も頭も良いなんて、まるで少女漫画の王子様ぽい。


(うーん、違うかな)


どちらかと言うと、乙女ゲームに出てきそうな年下のかわいい系ぽい気もする。


(いや、どちらもありうるよね。実際、葉月くんかわいいし)


最近はかわいい系キャラとかもあるだろうし。



まあ、違うところと言えば、性格に難があり過ぎる所だろう。



そこだけは、肯定しようとも納得もできない。



「………」


(って…葉月くんの容姿の感想を述べてどうするの)


葉月くんの容姿が整っているなんて、最初から分かってる事なのに。


「…はあ」


お茶とお菓子を頂いた後、もう一度許しを得たクションを抱き、ソファに深く腰を掛ける。


「大丈夫?もしかして調子悪い?」


溜息を付く私に心配そうに声を掛ける。


「ああ、うん。平気」


「……ふーん」


葉月くんは何かを察するかのような表情で私を見る。


「ねえ、美沙樹」


そして、静かな声音で私に声を掛ける。



「何?」


「食欲出てきたんだね」


「ああ、うん」


葉月くんは私が食欲ない事に気にしてくれていた。


「よかった。けど、元気はないよね」


「……ああ、うん」


「別に…はは」


苦笑いして誤魔化そうとしているけど、葉月くんには気付かれるだろう。


「美沙樹はさ嘘ついてもバレるから止めた方がいいよ。俺みたいに完璧に出来ないんだから」


「あ、うん」


一刀両断に言われてしまった。


さすがに偽りの性格で生きている分違うというものか。