確かこっちで合ってる。


このまま行けば葉月くんの住んでいるマンションが出てくるはず。


(白とクリーム色と薄ピンクのマンションだったはず)


一度しか行った事がなかったので、覚えが虚覚えだけど。


「あ」


記憶を辿りながら葉月くんを追っていくと、記憶通りのマンションが現れ玄関の中で葉月くんがオートロック扉を開けている最中だった。


私は急いで葉月くんに呼び掛けた。


いつもは大きい声を出すのは苦手だから出したりはしないけど、この時は大きい声を出した。


「美沙樹…?」


追いかけたりするとは思っていなかったのか、私の登場に驚いた表情をしていた。


(そりゃあ、そうだよね)


「どうしたの?」


「あの、えっと…」


追いかけたものの、いざ目の前にすると何を話したら…。


「ちょうどよかった。実は渡したい物があったんだよねー」


「えっ」


「おいで」


「う、うん」


何を話すかを考えていたら、葉月くんの方から話し掛けられた。


しかも、なぜか部屋に案内されている。


「はい、どうぞ」


「へっ?」


葉月くんの家の部屋に入り、リビングに通されてソファに座ってしばらくすると、葉月くんがタッパを持ってやってきた。


「煮物…?」


タッパは3個持ってきて、中には煮物や和え物などの惣菜系の料理入っていた。


「渡したい物ってこれ?」


「うん、作り過ぎちゃってね。食材よく貰うんだけど、いつも腐らす事が多いから、多めに作るようにしてるんだよね。でも男の2人暮らしつっても多すぎるから結局は腐らしちゃうんだよね。でも、あげる人もいないから困ってたから、ちょうどよかったよ」


「うん、ありがとう…」


「野菜ばかり入ってるけど、味付けは完璧だから。昨日作ったばかりのものだから」


惣菜と言っても、結構凝った感じのものだった。


葉月くんって本当に料理が上手な人なんだ。


(そっか)


何でも上手に出来るから、偽ることも上手く出来ていたって事なのだろう。


なんとなく理解して納得してしまった。