葉月くんの言葉はいちいち心に突き刺さってくる。



「うっ…ふっ…ううっ」



熱くなっていた目頭が、いつまにかポロポロと涙が溢れていた。



「ええーなんで泣くの〜?」



またしても葉月くんにびっくりされる。



「だって…葉月くんは、どうしてそんなに…優しいの? 私は…葉月くんの事 全然知らないのに。
…知りたいと思ってても、全然 知れないのに」



葉月くんのことを知りたいけど、彼がそれを嫌がるから、私は躊躇して言わないようにしている。



「!?」



急に出てくる涙に葉月くんは人差し指の関節を添えて涙を拭いてくれた。



(ええ!?)



その瞬間、葉月くんと見つめ合う形となり、頭が真っ白になる。



(やばい…こんな間近)



ただでさえ、葉月くんは綺麗でかわいいから、どこに目を向けたらいいのか分からない。



「よし、大丈夫?」



「う、うん…」



「全く…じゃあ少しだけなら教えてあげるから、その代わりに美沙樹も教えて…ね?」



「うん……」



おそらくそれは、抱えているものではなくて、自分の好きなのとかそういうものだと思う。



けど、それでもいい。



きっと私は葉月くんに特別になりたい訳じゃない。



仲良くなりたいだけなんだ。



頭をクシャと撫でられにこっと笑顔を向けてくれる。



(やっぱり、かわいいな。葉月くんって)



そして、私が思ったのは、彼はどこにでもいる普通の男の子だけど、きっと特別な存在なんじゃないかって思った。



だって、こんなにも優しくて強いから。



私がもう少し勇気を出せば、彼の心に手を伸ばせるようになるのかもしれない。



そしたら、彼の心も聞こえるようになるのだろうか。



でも、正直に言えばこのままでもいいんじゃないかって思ってしまっている自分がいる。