「夢…?」



「うん。見ちゃうと助かる事は出来ないんだって」



「なんで?」



「わかんない」



そういや、なんでそんな力があるのかここあさんは言ってなかった。



1つずつ知って理解しろって事なんだろうけど。



けど、私はすぐに理解出来る程利口じゃない。



「ここあさんは私に全てを理解してほしいみたいな言い方するけど、自分の事も狂気の感情も葉月くんも何もかも理解できていないのに、どうやって理解しろっていうのだろう」



(そりゃあ、理解したい感情はあるよ。
でも、それができないから)



「人の心が聞こえる力があっても、理解できるとは限らない。本当は理解したいけど、すぐにできる程利口じゃない」



「美沙樹…」



ここあさんは全部理解してるから言える事だけど、私からすれば色んな事がいきなりぶっ込まれた感じだ。



それを理解しろなんて難しすぎる。



「その狂気の感情に対しての感情はもういいの?」



「うん、今もう平気。夢にも鏡の前で目を瞑ると時々だけど襲ってくるけど、恐怖は持たなくなったけど、けど次はいつ来るのかが怖いだけ」



「そっか」



「……あ、あのね」



「うん?」



葉月くんに言わないといけない事があるのは事実だ。



「狂気の感情でずっと恐怖で調子悪かったのが急に良くなったのは、結局単純な事だったんだよね」



「単純?」



「分かってくれる人がいるだけでこんなにも不安が消えるなんて思わなかったの」



あまりにも単純過ぎて必要以上に自分に嫌になった。



「あーそれはあるかもね」



葉月くんは簡単に納得出来るんだ。



「それが嫌だったの?」



「うん、だってあんなに苦しかったのに、それなのに簡単な事で消えちゃうなんて、なんて情けなくて惨めなんだろうって」



悔しくてしょうがないのに、狂気の感情は仕方ないとか、簡単に理解なんて到底無理だ。



「それなのに、心原の事を理解しろだなんて私にはできない」



狂気の感情だって理解できていないのに、心原を理解できるはずない。



「結局、私が思っていた感情なんて何の意味もなかったんだよね。美実さんや心原を早く知って説得しようとしても何の意味も持たくて、回避したとしても未来は決まっているから無駄なんだって事を。…けどね、そんな事を突然言われても、納得できるはないの」



ここあさんは小さい頃から聞かされるから何とも感じないのかな?



それとも色んな葛藤があったのかもしれない。



理解した今となっては私の理解できない葛藤なんて考えなしなのだろうか。