「何飲む?」



「あ、何でも」



「そっか」



ドリンクの要望を聞いて、またキッチンの方へと戻っていった。



「……」



以前も2人きりになったけど、あの時は結局不運な空気のまま帰ったんだった。



そういえば、いつも葉月くんと2人で話しをする時は、だいたいが食い違いというか変な方向性になる会話をしてしまう。



基本的には葉月くんのことばかりで、要するに意見の食い違いというやつとも言える。



(今回もまた食い違い的な会話になったりしそうかも。葉月くんだもんね)



それよりも、もっと困ってるのは自分の事だろう。



「確かに困りもんだ」



思わず近くにあったクッションをぎゅっと抱いてぽつりと独り言を漏らした。



「何か困ってるの?」



「えっ」



顔を上げるとティーカップとお菓子をお盆に乗せてリビングへと戻ってきた葉月くんが、私の独り言に不思議そうに聞いてきていた。



「最近、妙な独り言多いよね」



「そうかな…?」



「うん」



そう言いながら、葉月くんはティーポットを持ちコポコポとカップへと注がれる。



(あ、甘い香り)



何のフレーバーの紅茶だろう。



紅茶の色からして普通の紅茶の色だ。



「どうぞ」



「ありがとう」



「うん」



(あっ)



ティーカップに手を伸ばそうと気が付いた。



両手でクッションを抱きかかえていた事に。



(しまった!)



思わず抱きしめてしまっていた。



他所様のお家なのに、なんという失礼な失態をしてしまった。



勝手に使うなんて…!



「ん? どうしたの?飲まないの?」



「ご、ごめんなさい…く、クッション勝手に使っちゃって…」



躊躇しながらそっと横にクッションをずらし謝る。



「へっ?…ああ、別にいいのに」



「よくないよ! いくらクラスメイトでも、勝手に物を使ったら良くないよ」



「じゃあ…使っていいよ。これでいいかな」



「……ごめんなさい」



変に気を遣わせるやり方をしてしまった気がして申し訳なくなってしまい、なんとなくまた謝った。



それに対しても「なんで?」というまたキョトンとされた。



しかし、なんであんな事をしまったのだろう。



葉月くんといるとなぜか落ち着く気がするからだろうか?



それはそれで気が緩んでいるのかもしれない。



(良いことなのかな)