「まあ、いいわ。お買い物行きましょうよ」



「えっ」



「好きな物を買ってあげる」



「さっ行きましょう! 休日なんだから家にずっといるなんてもったいないわ」



「………」



ここあさんは強引にでも私の手を引いてくる。



「分かったから」



「うん」



あんな明るい方なのに、心に心原の重苦しい感情があるなんて思えない。



見た目は優しくて良い人なのに、心の中は真っ黒に闇を持った人と同じなのかもしれない。



身近な人と言えば、葉月くんか。



でも、最近の彼は少しだけ変わってきている気もするけど、ただ偽っていた自分を辞めただけで、何も変わっていないのだろう。



ここあさんに言われて部屋に戻り、外用の服へと着替えて1階へと向かう。



「おっそいよー響ちゃん」



「ごめんなさい」



「じゃあ、行こっか」



「うん」



買い物行くと言われたけど、どこに行くのだろう?



お出かけでの買い物ではないみたいだけど。



「ここあさん、どこ行くの? 歩いての買い物?」



「バスでちょっと行ったところのショッピングモールよ。車か歩きか悩んだんだけど、近くだけど歩きでバスで行った方がいいかなって思って」



「そっか」



そういえば、ここあさんはいつも車で行っている。



基本的にあまり電車は使わないって言っていた。



私に合わせて歩きで行くことにしたのだろう。



「ねえ、響ちゃんはどういうファッションが好きなの?」



「えっ」



バス停まで歩いていると、ふいにここあさんが聞いてきた。



「響ちゃんの普段の服装からして、ゆるふわなガーリーって感じね。いかにも女の子って感じね」



「あ、うん。まあ、そうだね」



「私もそういうかわいい服装好きなのよね〜」



それはすごい分かる。



ここあさんの服装は、私みたいに全体にガーリー感が表に出ていないけど、少しだけ出てる大人さのあるゆるふわ感だけど、それでもやはり若い感じの服装に見える。



けど、ここあさんは20代と言っても違和感ないし、似合ってるから全然いいと言える。



「響ちゃんはレースとかフリルが付いた服が好きなのね」



「うん、甘めの服が好き」



「あら、私もね若い頃はそういう服ばかり着てたわ。
でもさすがに30後半になると難しいから、それでもかわいい服選んじゃうんだけどね」



「だよね! 私ねセーラーデザインの服が好きなの」



「セーラーか…そういえばよく着てるね」



「うん、あとねあとね」



ファッションの話をするのはすごく好き。



ファッション雑誌をよく見てるのも、買い物行くのもサイトで見ているのも全部同じ理由だから。



ファッションはスイーツみたいにキラキラしてて目移りするから。



特にパステルカラーとかフリルとかレースが付いてる、ガーリーやスウィートなデザインの服装が1番好き。