「ねえ、響ちゃん…きっと由理ちゃんは食べてほしいんじゃないかな?」


「えっ」


ここあさんは何かを馳せるように言う。



「………」


確かにそうと言うだろう。


その言葉に私はなんとなく手を伸ばした。


ホットサンドを両手に持ち、口へと小さくかぶりついた。


「響…?」


「響ちゃん…」


口の中でもぐもぐと噛み飲み込む。


(あ、お母さんと同じ味だ)


ここあさんが作ってくれたホットサンドは、お母さんと同じ味がした。


(そっか)


この時、分かってしまったんだ。


どうして食欲が全く出なかったのか。


葉月くんもここあさんも分かってくれたからだ。


葉月くんに関してはしっかり理解されなくても、同じようなものが本人に起きて理解していたからだ。


だから、食べれたんだ。


なんて…浅はかで単純なんだろう。


そう思うと、涙がこぼれた。


「えっ…ど、どうしたの?」


さすがのここあさんでも、突然の私の涙に驚いていた。


「…ごめんなさい…私…本当にどうしようもないよね…すごく」


「えっ」



情けなくて浅はかで自分が嫌になりそう。


たった分かってくれる人がいるだけで、こんなにも普通になれるなんて、なんて単純で弱いのだろう。