狂気の感情が生まれたから落ち込んでも仕方ない。



お母さんが亡くなるのは決まっていた事だ。



決まり事項みたいな言い方…なんて哀しい言い方だろう。



じゃあ、何も知らなければよかった?



それとも、最初から知っておけばよかった?



何か変わっていた?



ううん、何も変わらなかった。



だって、同じだから。



未来は決まっていたから。



それでも、変わってほしいって期待してしまいたいじゃない。



誰も本当の事など未来など誰も分からないじゃない。



そんなの悲しい。



けど、心に思った所で何かを変わる事もないんだって知っていた。



けど、けど…やっぱり…どんな思いでも良い方向に進んでほしいって思いたいじゃない。



悲しい感情で終わるんじゃなくて、優しい感情で終わりたいってそう思いたいじゃない。


ここあさんの言葉になぜか食欲が戻り、あまり食べ物を口に入れていなかったせいか体調が悪かったのが、食べたすと体調が戻った。



「はあ」



けど、心はぼんやりとしてて気持ちは戻ってはいなかった。



(そりゃあ…)



人はいつか死ぬ生き物だし、それは分かってる。



だからと言って、決まっていた運命なんて。



助ける事も回避できないなんて、そんな悲しい事ある?



ここあさんは全てを知って理解してるから言えて、諦めているんだ、全てを。



正解には朗らかだから、諦めたくないとか努力を怠らない人だと思ってた。



どうしようもない事は最初から諦めを付けてしまうのだろうか?



そうしなければ、いや、そうするしかなかったから?



どっちにせよ、私には理解ができない。



「そんなの嫌だよ…」



「何が?」



「えっ」



ぼやきを呟くと、それに反応したかのように聞き返された。



でも、その声にはとても聞き覚えがあった。



そっと顔を上げると、目の前に葉月くんが立っていた。



「葉月くん? えっ」



「おはよう、体調悪い? 顔色は良好なのかな。
あ、でも疲れた顔をしてるかな」



そんなに疲れた顔しているのだろうか?



朝、鏡見た時は普段と変わらない肌色だった。



元から肌が白い方だから分かりにくいけど、この前は本当に酷い顔つきをしていたのは自分でも分かる。



「良かった、食欲戻ったんだね」



「あ、うん」



そういえば、葉月くんは私の事を何より心配していた。



「………」



ふわっと頭に手を置かれ撫でると同時にニコッとほろこび離れていった。



葉月くんにこの事を話したらどういう反応を返してくれるのだろうか。



なんとなく気になった。