その時の記憶というのは、本当に忘れていた。



ただ、最後にお母さんの心の中に聞こえた言葉が無意識に覚えていただけだった。



《…本当にそれが、夢の意味通りだったらどんなによかったのかしらね》



私は気に掛かっていたけど、聞く事はできなかったんだ。



「思い出した…あの時の夢だったのね」



「そうね。その事については由理ちゃんから聞いていたわ。由理ちゃんは知っていたからわざと恐怖心煽らない言い方で夢の意味を説明したの」



「そうだったんだね…」



その時、接点が繋がった気がした。



というよりは、少しだけ理解が出来たんだ。



「だからね、結局、誰が何しようとしても殺される事は確実だった。遅らせる事でしかないのよ」



私が手を差し伸べようとしても、早くに知っても、未来は変わらなかった、そういう事なんだ。



「…なにそれ…じゃあ、私は何も出来ないって事なの?」



何をすべきなのかは明確ではない。



けど、こんなにも虚しい気持ちになるのはおこがましい。



「ごめんね…本当は言うべきじゃなかったかもしれないの。でも、やっぱり知るべきだと思ったから。
でもまあ…正直に言えば、何も知らないまま生きていけば、どれ程幸せなのかなって。でも、それも考えものなのかもね」



「………」



知る事に意味があるそう思っていた思いはすべてが撃ち抜かれる気がした。



知っていれば理解できると思っていたから。



でも、知れば知るほど心に余裕を感じなくなっていく。



本当に知れば理解できるという思いは正解だろうか。



いや、違う…むしろ分からなくなる。



私の思いは果たして正解だろうか?



何が正解で何が間違っているかなんて誰にも分かるべきじゃない。