それは私が小学2年生の頃だった。



体育の授業で誤って怪我をして倒れてしまった私。



すぐに治療してくれたので痕は残る事はなかった。



治療してもらい家で眠っている間、私はとある恐怖の夢を見てしまったんだ。



それがー。



『っ!!?』



とても恐ろしい夢に目が覚めた。



治療してもらったとはいえ、痛む怪我に我慢しながら部屋から抜け出しあの人を探した。



『いない…嘘…やだよ』



けど、家の中を探しても会いたい人に会えなかった。



その悲しさに更に恐怖を感じた。



『あら、起きて大丈夫なの? 痛いんじゃあ』



玄関扉が開き家に入ってきたその人にばっと抱きついた。



『あらら、どうしたの? 響』



『お母さん〜〜』



お母さんの姿にいてもたっても居られなくて、夢じゃない現実ないと思い込ませたかった。



嬉しさと悲しさが込み上げてきた。



『うっ…うわあああん』



泣きじゃくる私にお母さんは優しく撫でてくれた。



昔からお母さんはとても優しい人だった。



そんなお母さんが大好きで大好きで、だからあの夢を見た時すごく怖かったんだ。



『どうして泣いてたの? 怪我あったけど治療したし、あ、もしかして、1人で怖かったの?ごめんね』



『違うの違うの』



分かってくれないお母さんに何度も違うと連呼する。



『あのね、夢をみたの』


『夢?』



『お母さんが死んじゃう夢』



『えっ…』



その時、一瞬驚いたりはしたものの、なぜか冷静だった気がする。



『すごく怖かったの。すごく』



『………』



お母さんは何か考え込むように、しばらく黙り込み私に向けた。



それは、まるで私に恐怖を与えないような言い方だった。



『大丈夫よ、それは夢なのよ。本当に起きる事じゃないのよ』



『そうなの?』



『うん。実はね見た夢にはそれぞれ意味があるのよ』



『意味?』



『うん。おそらくそれはえーと…そうそう、幸運を意するのよ。つまり良いことが起きるんだって』



『じゃあ、悪い事は起きないの?』



『うん、起きないよ』



『そっか♪』



その言葉に信じ込んでいたから、気にしなかったんだ。



ただ、その言葉は嘘だったんだ。



本当の現実に起きてしまう事だったとは。



夢の意味としてはあってても、私からすればあっていなかったんだ。