「ここあさんは美実さんを助けたいの?」



「…えっ」



「私は…美実さんが助けを求めているように見えるの」



お母さんも助けたいと言っていた。



けど、誰も助けれなかった。



きっとおばあちゃんも、同じ事を言えるのかもしれない。



「…うん、まあ、助けたくても助けられないのよ。
支配されたら手を伸ばしても、拒否られるからね」



そっか、じゃあ、私が手を差し伸べた所で変わらないのだろう。



「じゃあ、だめなの? 理解できないの? 自分も誰も」



希望も未来もすべて狂気の感情に奪われるんだ。



(じゃあ、なんの為の想いなの?)



「助ける事も理解は難しいけど、信じる事は出来るかもしれない。何度も言い続ければ可能性は開ける。
…美実や狂気の感情を理解するにはそうするしかない」



「確実じゃないのに? いつまた出るか分からないのに? 何をしだすか分からないのに?」



ここあさんの考えが私にはどうしても納得出来なくて、諦めかけてる彼女に何度も問い詰めた。



「それしか方法ないなら、そうするしかないじゃない…」



けど、哀しそうな表情できっぱりと言う。



「誰も理解しないでしょ、犯罪者の事なんてさ」



「……」



確かにそうかもしれない。



「由理ちゃんも支配されていた。けど、あの子の場合は逃げる事だった。関わりたくない逃げたい、そんな感情をずっと思っていた。あの子の狂気はいつだって美実から逃げる事だったの。逃げる事と怖がる事、それがあの子の狂気」



確かにお母さんはいつも何か怖がって逃げている気がした。



そっか、私の過保護もそこから来ているのだろうか。



でも、全て狂気でまとめるなんておかしい気もするけど、けど、そう思う事実があるから否定もないのだろう。



「でも、どうして全て狂気だって言えるの? なんでもかんでも狂気で片付けるなんてやり過ぎじゃないかな?」



本当はもう分かってる。



分かってるはずだ。



それでも聞いて置かないと気がすまなかった。



「響ちゃんは何も知らないからね」



ここあさんは歪んだような瞳で私に向けた。



その瞳はまるで心に大きな闇を持っているかのような、お母さんや美実さん…そして葉月くんが持っている感情と同じだった。



葉月くんは心が聞こえないから難しいけど同じだと思う。