「なんで、そん事を聞いてきたの?」


「えっ…えっと」


(そうだよね。急にそんな事を聞いてくるなんてびっくりするよね)


もう正直に言ってしまおう。


回りくどい聞き方などしないで、正直に。


「あのね、夢をみたの」


「夢?」


葉月くんはキョトンと目を丸くしながらも私の目をじっと見てくれる


「うん、その葉月くんのお母さんが出てきたの?」


「えっ…」


その瞬間、葉月くんが動揺しているように見えた。


「母さん…?」


「実はね」


夢の内容をかいつまんで葉月くんに話した。


「……そう、なんだ」


夢の内容を話し終えた後、葉月くんは妙に正気のなくなった表情をしていた。


「葉月くん? …大丈夫?」


「…ああ、うん。大丈夫」


よほどショックなものだったのだろうか?


心の声が聞こえないからよくわからない。


黙られると、本当にわからない。


「…はは」


ふと鈍い笑いが聞こえてきた。


「はあ…本当にもう…母さんも母さんで勝手なんだから。本当……っムカつく」


怒りというよりは呆れている感じに近かった。


「……」



「…同じだよな、本当に…。美沙樹に求めようとするなよ、全く」


呆れているのに、嬉しそうな表情をしている気がした。


「…っ…うっ」


「!?」


(泣いて…)


きっと葉月くんにとってお母さんは、辛い存在の人に見えていたのかもしれない。


(私ってなんて愚かなんだろう)


「ごめんね…なんか」


目尻を人差し指の末節で涙を払いながら私に向ける。


「ううん、全然…」


「…本当、俺にどうしろって話しだよ。
あの人だって同じなのに、自分の事はいいのかよ。でも、人の事言えないか」


「あの、大丈夫?」


「うん、大丈夫大丈夫。なんか、母親の事になるとカっとなる事があるんだよ。その傾向だから、嫌いって訳じゃないんだけど、なんていうか気持ちが変になるんだよ。…本当、母親なのにね」


複雑なものなのだろう。


私が口を挟むものでもないと思う。