「………」



今日もいつものように、教室で雑誌を広げていた。



ぼんやりと目を通していると、見知った声が耳に入って来る。



「優ー昨日遊ぼうって連絡して行ったのに、もう出ていったって言われたんだけど!」



「はあ?」



峰流さんがいつものように葉月くんに絡んできている声に、私はなんとなくそちらの方へと目を向けた。



「約束してねえだろうが…」



「言ったもん!」



「言ってない」



昨日って葉月くんと出掛けていたから、家に行っても居なかったのだろう。



「いや、言ってたけどさ。忘れてるだろ、それ」



篠原くんが呆れた表情で峰流さんに言う。



「…ていうか、昨日。俺、出かけてたんだけど」



「だったら、あたしも誘ってよ」



「なんで、誘わなきゃいけないんだよ」



「えー零も誘ってほしいよね〜!」



まるで駄々っ子のように葉月くんに突っかかってる。



「えー別に…1人で行きたい時とかあるんじゃね?」



篠原くんの方が大人な発言だった。



「あのさ…こう言うのもなんだけどさ」



「ん?」



ふと葉月くんの口調が苛立ちの籠もっているように聞こえる。



「そういう駄々っ子するの止めてくんない?
歌菜みたいですごく癪に触るんだけど」



「えっ」



「!」



その言葉に篠原くんはピクッと大きく反応していた。



「えっ…?」



(あ、まただ)



葉月くんの白石さんに対する苛つきを見せた際にいつも黒いオーラを感じる時がある。



「はあ」



と、溜息を付きながら2人から離れて、私の席の方に近付き、そのまま横を通っていく。



その際、一瞬葉月くんと目が合う。



「………」



そして、教室を出て行ってしまったのだった。