「あ、あの…葉月くん?」



「うん?」



「お金…」



「ああ、いいのいいの。プレゼント♪」



なぜかあげる前提でニコニコしながら言われた。



「いや、そうじゃなくて…これはその…私が自分で買うつもりで、出してもらうつもりなんか」



正直、なぜ払ってくれたのかが意味不明だ。



「いいんだよ…。いいからさ…」



「……」



葉月くんは少しだけやんわりした笑みを浮かべ、そのままお店を出ていった。



そんなの申し訳ないのに。



私は慌てて葉月くんの後を追った。



「待って、葉月くん…! こんなのだめだよ。
だって、困るよ。それに、お礼するのは私の方なのに、それなのに貰えないよ」



必死にキーホルダーを貰えない事を訴えるが、葉月くんはいつもの調子で私に向ける。



「いいんだってば。
俺がそうしたいから、そうさせてよ」



「えっ…でも」



それから、葉月くんは少しだけ寂しそうな表情をする。



「誘ったのはあげようと思ったから、誘ったんだよ。
…迷惑だったかな? …俺は結局さ…何にも出来なかったから、せめての想いなんだよね」



「………」



葉月くんは自分に不器用で理解してない人なんだろうと思った。



けど、自分を理解してないから私も葉月くんを理解できないでいるのかもしれない。



「分かった、ありがとう」



「………」



お礼を伝えると、葉月くんは少しだけ嬉しそうに見えた。



「あのね、その代わりに条件があるの。いいかな?」



「うん?」



私だけが貰うのはフェアじゃない。



こんなのは納得いかない。



「私にも見返り出来るものをさせて」



「…別にいいのに、そんなの」



「私が嫌なの!」



「うーん、そうだな」



最近、葉月くんの事で分かった事がある。



それは、私に対してすごく柔らかいって事。



ただそれだけだけど、私としてはすごい情報だ。