「そうだ、良い事を思い付いたよ」


「?」



しばらく沈黙を開いてから、葉月くんがふいに声を出した。



「だったら、俺が明日お昼作って来てあげるよ」



「ヘ?」


「大丈夫! 俺、料理得意だから期待してて♪」


「いや、でも…」


そんなの手間かかるし、食材だって掛かるだろうし。


「いいよ、そういうの」


「いいから♪」


絶対に折る事なく、笑顔で押し切ろうとしていた。


葉月くんは教室ではあまり笑わなくなったのに、今はすごく笑顔だ。


「あら、目を覚めたのね」


いつの間にか戻ってきた、保健の先生が顔を出す。


「体調はどう? もう大丈夫?」


「あ、はい」


そういえば、今日はいつも以上に疲れていたはずなのに、いつの間にかマシになっていた。


なんでだろう?


食べ物を口にしたからだろう?


「あ、あなたもありがとうね」


「別に…。ていうか、生徒を良いように使うのやめてくださいよ。俺、保健委員だからって、あなたの召使いじゃないんだから」


「召使いって…酷い言い草ね。あなた最近口悪くなったわね」


「別にいいでしょう」


そういえば、葉月くんは保健委員だった。


「美沙樹、帰ろう」


「えっうん」


「……」


なんで、葉月くんはいつも私に優しいのだろう。


優しい人だけど、他の女の子に対して違う気がする。


…私の思い違いだったらいいのだけど。


それか、白石さんに狙われたから?


お母さんを美実さんに殺されたから?


美実さんの姪だから?


それか、他の理由があるからだろうか?