「ねえ、何があったの? もしかして、俺のせい? 俺自身の事で君にぶつけてばかりしたから?」


「ちが…っ 葉月くんは何にも悪くないの! 私が状況に理解出来なくて怯えてるだけ…っ」


「えっ」


葉月くんの事も確かにあるのはあるけど、落胆している理由はほとんど私が理解できてないだけだから。


「……そっか、ならいいけど」


「?」


葉月くんは以前のように無理やり話させようという行為はしてこなかった。


というか、躊躇している感じがあった。



「でもさ、食べれる時に食べとかなきゃ、いざという時に動けなくなっちゃうよ。そんなの本末転倒でしょ。俺はさ、どんな時だって食事だけはちゃんとしてたからさ」


「………」


葉月くんの言いたい事はもちろんよく分かる。



分かるけど……。


「でも、本当に食欲なくて、このままじゃだめだと分かってるんだけど、落胆する感情に押し殺されそうで怖いの」


瞳からポタポタと真っ白な掛け布団の上に涙が落ちていく。


おにぎりを持つ両手がブルブルと震える。


「こんなの知りたくなんかなかったの。私はずっと普通の感情だって信じていたから…。でも間違っていたんだって。…私はどんなに足掻いたって抗っても心原の血を通った者だから、避けては通れない道だと言うことを」


どんなに優しい人間でさえも起きてしまう事で、一度知ってしまったら自分が自分じゃなくなってしまう。


「えっと、つまり。それは、美実さんと関係ある事だよね?」


「…うん、狂気の感情があるの」


私は正直に口を発した。


「狂気? 狂った感情って事?」


「…うん、お母さんがどうして私に教えなかった理由を分かったの。心原には普通とはありえない感情が潜んでいて、それが狂気の感情なの。一度生まれてしまうと、何をしだすか分からなくなる。どんな優しい人でも絶対に発情してしまうって言ってたの」


詳しい事はよく分かっていない。


ただ、恐ろしいものだとここあさんは言っていた。


「自我はある分はまだいいの。憎しみの感情が強ければ強いほどに狂気の感情支配されるの。美実さんもおばあちゃんもお母さんも支配されていたんだって」


お母さんはも美実さんに対して憎しみを向けていたけど、冷静になると支配が解ける体質だったと、ここあさんはいっていた。


なぜ、支配とか憎しみが及ぼすのか私には全く分からないけど、けどもっと分からないのは生まれてしまった感情だ。