「……あ、そんな事は」



葉月くんは否定しようとしているけど、どこか躊躇している感じに見えた。



「ないよ…俺は…そうなのかな?」



私が何度も葉月くんにお礼を言っても、絶対にすぐに否定して「違う」と断固否定して認めようとしなかった。



けど、今回は疑問を持ちながら肯定したのだ。



初めての反応だ。



躊躇しながらの否定も疑問を持ちながらの肯定も全部初めての反応だった。



決して確実な肯定でもなかったとしても、葉月くんに何かしらの光を向けられたのだと思うと、少しだけ嬉しいと思うものがあるのかもしれない。



「まあ、いいや。君がそう思ってるのなら」



「………」



やっぱり気のせいじゃない。



葉月くんは私に対してすごく柔らかい気がする。



「そういえば、鞄に何も付けてないよね、今。
付けないの?」



「ああ…えっと…新しいの買おうっと思ってて。家にキーホルダーあるけど、あんまり付けたいと思わなくて」



だって、それらは全部お母さんが買ってくれたもので、古いしこれ以上何かあって壊したくない。



「……そっかあ」



葉月くんからキーホルダーを受け取り、なぜか葉月くんまでも沈んでいるようにも見えた。



「じゃあ、先に戻るね。
お弁当ありがとう、嬉しかった」



そう言って戻ろうとした矢先、葉月くんが「そうだ!」とばっと私の前に立ちはだかった。



「ねえ、休日出かけようよ! キーホルダー買いに行こうよ」



「…はい?」



「うん、そうしよう♪ 約束ね!」



葉月くんの突然の誘いに面を食らって、どう反応したらいいのか困っていたのにも関わらず、私の反応を聞くまでもなく勝手に決められた。



「あの、ちょっと待って! 私何も返事ー」



「じゃあ、また連絡するから。先に戻るねー」



私の声に一切傾ける事なく、完全に決定事項とされて先に教室へと戻っていったのだった。



「してないんだけど…」



完全に私置いてけぼりなんだけど。



ていうか、そんなにグイグイと来られたら今更断れないじゃない。



「困ったな〜」



(やっぱり、他の子との差がありすぎるよ)