「本当、あの人の価値ってなんなんだろうな」



葉月くんは宙を見上げてぼそっと言う。



「父親に虐待されて酷く傷付いたはずなのに、離婚して再婚した父親が優しかった事ですぐに立ち直れて、不良に酷い事されて逆襲で事件を起こして不良がやった事など抹消されて周りから悪い人間だと罵られて酷く傷付いて鬱になったのに、父さんの優しさに元気を取り戻して、父さんの親戚の方から噂だけを信じて理解されなれず、それでまた落ち込んで、ひいじいちゃんと祖父母だけが理解してくれてまた元気取り戻して、結局は事故になくなって親戚から罰だと言われて、あの人の人生って何の意味があったんだろうな。単純だったり傷ついたりして、結局最初から人生最悪じゃんか」



苛立ちのような感情で、いきり立っているでもなく、ただの自分のお母さんに対しての愚痴だった。



「その癖、自分の事嫌われていても仕方ないとか。事件の事だってそうじゃんか。不良がやった事を抹消させて自分達は傷付けられただけで、じゃあ最初始めたのはお前らじゃねえのかって思うよ。母さんは最初からいい人間じゃんか。実の父親だってそう、か弱い抵抗の出来ない子供も虐めて何が楽しいんだって、お前のやってる事は単なる社会の不満をぶつけているだけだろうって」



葉月くんの口調がどんどん荒々しなる。



「……」



葉月くんは色んな事を不満を感じているのだろう。



でも、不満を持ってしまうのも当たり前なのだと思う。



世の中は理不尽な事が多すぎる事が多い。



とても多い…とすごく思う。



「はあ…ごめん」



「あ…」



自分の心を理解できないのに、どうやって葉月くんを理解しろっというのだろうか。



難しい難題ばかり押し付けられて来ている気がする。



『自分の心を理解しなければ相手には伝わらない』



あの人が言っていた言葉が脳裏にこだました。



きっと、同じだ。



自分の心を理解しなければ、葉月くんの心も理解出来ない。



そういうものだろう。



では、どうすれば理解出来るのだろうか。



ここあさんはどうやって理解したのだろうか。