「ごちそうさまでした」



驚いた事に全部食べれた。



そういえば、昨日くれたおにぎりも全部食べれた。



なんで、食べれたのだろう。



やはり、精神的な問題なのだろうか。



昨日まで疲れて仕方なかったというのに、朝だってすごく疲れてた。



でも、昨日もそうだったけど、葉月くんが近くにいると、不思議と少しだけ清々しい感情になる。



(変なの)



「ねえ、葉月くん。
なんで、葉月くんは私に優しいの?」



「えっ」



お弁当を片付ける葉月くんに私はなんとなく疑問になっていた事を尋ねると、彼はなんとも不思議そうな顔をしていた。



「ずっと不思議だったの。わざと優しくしていたとしても、他の女の子と私の接し方が違う気がして」



(杏ちゃんもそんな事を言っていた)



「………」



私の尋ねに葉月くんはどこか困惑した表情で口を尖らしていた。



「あーうん…まあ…なんでだろうね」



てっきり、私の勘違い的な事を言われると思っていたのに、むしろ否定する事もなかった。



「困るなあ、そういう質問は」



そう言いながらニコニコと笑っていた。



言いたくない事なのかもしれないと思ったので、別の質問に変える事にした。



「えっと、ごめんね。今のいいや。
その…教室でもそういう風に笑えばいいのに」



「あ、そう。…えっ?」



話題を変えると言うと、なんとなくホッとした顔をされて、少し複雑な感じだったけど、とりあえず気には止めないで置いた。



けど、次の話題に葉月くんは先程よりも驚いた表情をしていた。



「葉月くん…笑うともっとかわいいから、素でも笑えばいいのになって。私には笑ってくれるから、普段でも笑ったらいいと思うよ?」



こういうのおせっかいって思われるのだろうか?



「ああ、うん…難しいよね、それは。前にも言ったと思うんだけど、素で話すようになったけど、正直言ってかなり疲れるんだよね〜。今まで本当に嘘の自分を見せていたからこそ、そのせいで他人と接するのがすごく疲れてしまうんだよ。だから、零詩に向けれても他人にも向けられなくて」



「でも、私には向けてくれてるよね?」



「ああ、美沙樹は…特別だから」



ぽつりと言った言葉にドクンと胸の鼓動が聞こえた。



(特別…?)



初めて葉月くんの口から聞いた言葉だ。