髪型をセットして、更に疲れ果てた表情で洗面所を出る。


「ご飯食べれる?」


「ごめんね、いらないや。お昼もいいかな」


「そう…」


いつもならお腹空いている筈なのに、本当に何もいらなくて食べたくなかった。


「そっか、じゃあこれでお昼食べれるなら買いなさい」


そう言って、お父さんは財布の中からお金を渡してくれた。


「ありがとう…」


今までずっと学校の昼食はお弁当以外は持っていった事はなかったので、遊び以外でお昼代を貰うのは初めてだ。


でも、どうせ使わないような気もするが。


出してくれていた野菜ジュースだけは飲めたので、それだけ口に流し込んでリビングから出ていった。


「………」


扉を閉めると、お父さんとおばあちゃんの会話が聞こえてきた。


「やっぱり響ちゃん変よ。ずっと変だったけど、昨日から本当に変よ。ねえ、玲戸。あなた何か知っているんでしょ?」


「………」


「由理華ちゃんの事でも何か隠している事があるんでしょ? 私はずっと知っていたわよ。何かを悩んでいることくらいは。けど、どうして何も言ってくれないのよ? そんなに信用ないの? 別に言いふらしたりしないわよ」


「母さんがそんな事をしないのは分かってるけど。俺だって、本当の意味ではちゃんと理解できるものじゃないんだ」


「えっ…どういう事?」


お母さんはよく言っていた。


『お父さんは普通の人だから分からない所がある』からっと。


最初意味が分からなかったけど、今思えばそういう事なんだと理解出来る。


(普通か…)


お母さんは全然普通じゃなかったんだ。