「寝るとね、狂気な感情が襲って呑み込まれそうになるの。目を瞑るとね、また同じように呑み込まれそうになる。私もいつか支配されて酷い事をしてしまうんじゃないかって怖くて仕方ないの」



私は心の中で信じてた。



私はお母さんやおばあちゃんや美実さんみたいな人間にはならないって、信じて疑わなかった。



だって、私は普通だって。



それに信じて居なかったから、そんな感情になるなんて。



ありえないんだもの。



「こんなの違うの…絶対に違う。こんな哀れな感情私じゃない…。私はこんなの知らないの…っ 知りたくなんかないの!」



悔しくて虚しくて辛いしか出ない。



どうしたら、落胆した感情が消えてくれるかなんて、全く持ってして分からないし、こんな感情理解できない。



「…美沙樹…」



じっと私の訴えを聞いていた葉月くんは、また近寄り先程と同じように私の持っているおにぎりを手にし口元に押し付けた。



「ふぐ!?」



「…食べて」



「………」



彼の声が少しだけ身震いしているように聞こえた。



おそらく、葉月くんはお母さんと同じような感情を持っているから、同情したのではないかと思った。



「…わかるよ、そういうの。悲しいよね、嫌だよね。
真っ直ぐな美沙樹だから恐怖だよね。俺はそういうのよく分からないからどうとも言えないけど。けど美沙樹は違うんだよね」



今度こそ弱い心だって思われたのだろうか。



(そうだったら、いいのにな)