今まで、一定の距離だったのが近くなる。


そして、物語調の語りで女の人は話す。


〈人の心というのは危うくて脆い。自分の感情を理解しないと相手にも伝わらない。優弥は自分の感情を理解していない。だから、偽った自分を出してしまうの〉


感情を理解するってどうやって?



〈私のせいでもあるとは言え、今の優弥はとても空っぽ。何か方法がなかったのかと自分で後悔している。自分を知らないと変わらない。けど、今は無理なのかもしれない。それでも、優弥を助けたいの〉


この方は本当に葉月くんが大事で後悔している。


そして、葉月くんに伝えられない事も全部。


また、物語調の口調で口にする。


〈人の心とは危うくて脆い。突然、何かが溢れて止まらなくなる。一度止まらなくなると、取り返しのならない事になる。けど、自分では抑える事はどうしてもできない。だからこそ、手を差し伸べるべきだ〉


つまり葉月くんはそれができていないと言うことだろうか。


私はそれが出来るのだろうか。



可能性はゼロに近い。


ああ、なんて私は無能なのだろうか。


〈悲しい心ね〉


女の人は最後にその一言を呟き、いつの間にか辺りが暗闇に包まれていたのだった。