「そういえば、びっくりしたわよ。誘拐されたって」


「ああ、うん」


「しかも、あの心原 美実でしょ? 本当に大丈夫だったの?」


「うん」


おばあちゃんには葉月くんの事も話してない。


もし、葉月くんと美実さんと何かしらの関わりがあると言ったら何を言われるか分からない。


だっておばあちゃんは、お母さんの両親を美実さんが殺害された事を知った際、酷くお母さんに対して軽蔑を向けているような目を向けていたそうだ。


おそらく心の整理が分からなかったんだと思う。



そう、お父さんは言っていた。



だから、言わない方がいいじゃないかと思った。



「どうしてなのかしらね……」


「………」


疑問を持つのは当たり前の事だろう。


「ねえ、響ちゃん。最近、どうかしたの? なんだか変よ」


「えっ」


「ずっと疑問だった事があるの。由理華ちゃんはいつも親戚の話しをしてもはぐらかさせるの。
まるで隠すように。そして決まったように『親戚居ないの、私』ってね言うのよ。変でしょ。天仲さんの事も妹の事も隠していたんだって知って驚いたけど、何か理由があるんでしょ? 響ちゃんはそれを知ってるんじゃない? 玲戸は口止めされているのか、全く話そうとしないし。うちの親戚は変な疑いを持ってるのよ」


お父さんの方の親戚も同じだろうか?


葉月くんのお父さんの方の親戚と同じで、お母さんの事を嫌っていたのだろうか。


口には出さないだけで。



いつもお母さん、お父さんの親戚の方と楽しそうに話していたのに。



あれは、葉月くんみたいに演技だったのだろうか。


そう思うと、突然心から妙な苛立ちを感じた。



「みんな嫌ってたの? お母さんを殺したおばあちゃんとおじいちゃんを殺した犯罪者を持った妹をいる事にお母さんを嫌って憎んでたの? もしかしたら、美実さんのように殺したりするんじゃないかって、みんな忌み嫌っていたの?」



「えっ…ちょっと待って響ちゃん。何を言ってるの?」


なぜか止まらなかった。


マシンガンのように感情が溢れるかのように止まらなくなっていた。


どうして言葉が止まらないのか分からなくなっていた。


まるで自分が自分ではないかのように。