「あら、響ちゃん? はよう、随分早いのね」



2階に降りてリビングを入ると、おばあちゃんが来ていて、早く起きてきた私に驚きの目を向けられた。



「おはよう。うん、目が覚めちゃって」



「そう…」



おばあちゃんは昨日の私の光景から少しよそよそしかった。



「おはよう、響」



「…おはよう、お父さん」



挨拶をしてそのまま洗面所の方へと向かった。



「……」



いつものように顔を洗い鏡を見る。



「なんて、酷い顔」



ちゃんと寝た筈のに酷く疲れている顔をしている。



「最悪だ…」



その時、一瞬目を閉じた。



その直後、心に何かが迫ってくるものを感じた。



「っ!?」



驚きばっと目を開ける。



「何…?」



それは昨日感じた恐怖の感情と似ていた。



人の心は危うく脆い。



一度生まれてしまった感情は消える事はなく何度も迫ってくる。



みんな、おばあちゃんもお母さんもここあさんも美実さんも、みんなみんな抗って苦しんでいたのだろうか。



そして、おばあちゃんとお母さんと美実さんはこの狂気な感情に抗う事が出来ず支配されていたって事だろうか。



「私もなるの?」



心原の血の狂気の感情に支配されてしまうのだろうか?



(支配されたら、酷い事をしてしまうの?)



それが、何より恐怖で恐ろしく怖かった。



他の人は大丈夫だって言うだろうけど、こんな感情初めてで怖くてどうしようもない。



私は酷い人間なんてなりたくないのに。



お母さんの言う優しいままでいたいのに。



どんどん深い恐怖に堕ちていって、心がどんどん沈んで行っていることに、私は気づかないでいたんだ。