「大丈夫なのか? 熱はないようだけど一体どうしちゃったんだ?」



なんとか気持ちを抑える事が出来たものの、晴れ晴れしいものではなかった。



「お父さん…私、気付いちゃった」



「ん?」



「心原の血は狂気だよ…。お母さんが隠し通したかった理由が分かったの。…狂気な感情」



「狂気って由理華が昔に言っていた事だよな。
血によって感情が支配される事があると言っていたけど、そんな漫画みたいな事がある訳」



お父さんは本当の所何も信じていない。



感情や心の闇に対して、何一つ理解しようとしない。



「でも…間違いないの」



「………」



詳しい事は言ってはいなかったが、あの心優しそうなここあさんでさえも、そんな狂気な感情が出る事があったのだろう。



なんでこんなに怖いのだろう。



ずっと何も気に止めていなくて、ここあさんの話しにでも「自分にでも来てしまうのかな」そんな程度でしか考えておらず、正直現実味には考えていなかった。



だから、本当に来てしまうなんて思いもしなかったんだ。



怖い。



初めて自分が心に違和感を感じたのだった。



お父さんもおばあちゃんも何も分からない表情をしていた。



けど、おばあちゃんは心を支えるような感じだった。



「ここあさん…」



スマホからここあさんの電話番号を凝視していた。



せっかくおばあちゃんが作ってくれたご飯食べれなかった。



食欲が突然出なくなって食べたくなくなってしまった。



「……」



(やめとこう……)



なぜか、なんとなく話す気にもならなかった。



それに、今電話なんてするなんて非常識だ。



不安が押し退ける。



明日にはきっと良くなるだろう。



そう思って瞼を閉じた。