「……」



この人は葉月くんのお父さんって事は、葉月くんの事をよく知っている筈だ。



きっと篠原くんよりもずっとずっと。



「じゃあね、今度家に遊びに来てね」



「あ、あの…っ」



振り返る葉月くんのお父さんに私はとっさに呼び止めた。



「えっ」



びっくりした様子で振り返る。



「お父さんだから葉月くんの事よく知っているんですよね?」



「そりゃあまあ…父親だからね」



私はおそらく必死だったと思う。



葉月くんの心を聞えない分、彼の心にある葛藤や闇を理解できない自分がもどかしくて仕方なかったんだ。



それでも、何もできない自分が嫌だったんだ。



だから、気が付いたら私はお父さんを呼び止めていたんだ。



「教えてほしい事があるんです。私、葉月くんの事を知りたいのに理解できない自分が嫌なんです。
だから、教えてほしいんです!」



「………」



葉月くんのお母さんの話に、葉月くんの想いを本当の意味で理解できない自分がいるもどかしさが悔しくてしょうがない。



篠原くんの言う通り知るのを諦めるべきなんじゃないかと思った。



だから、これで最後にしようと思ったんだ。



葉月くんのお父さんから聞いても理解出来なかったら諦めるべきだと。



理解できないからすぐに諦める程、私はお利口じゃない。



だから、もう一度チャンスを求めたいと思ったんだ。