「ただいまー」



葉月くんのお父さんと別れてトボトボとした足取りで家に帰った。



「あらー随分遅かったのね」



家に帰るとおばあちゃんに迎えられた。



「おばあちゃん、来てたの?」



「待っていたのよ」



「そっか、ごめんね。待たせちゃって」



おばあちゃんに頼まれた物を鞄の中から取り出し渡す。



「うん、ありがとう。ごめんね、頼んじゃって」



「いいよ、ついでだし」



おばあちゃんに頼まれたのは手芸用品で、おばあちゃんはこう見えて手芸教室の先生でもある。



よくこうやって授業で使う布などをおつかいされる事がある。



その度にお母さんに心配されて一緒に付いていく事になるが。



「由理華ちゃんがいたら、きっと付いていくって大騒ぎしているわよね」



「そうだね、お母さんだもの」



「ホントっ度が過ぎる過保護の方よね。なんであそこまで過保護だったのかしらね」



おばあちゃんは心原の事に起きた事件を話していない。



ここあさんからは「話さない方がいい」と言われた。



おそらくお父さんでさえ理解できていないのだから、おばあちゃんに話したって同じ事だろうと。



これも葉月くんと同じ事だろう。



いや、でも…葉月くんはきっと理解してくれるのだろう。



普通の人に理解できない事を普通の方に話したって何の意味も持たないってことだ。