「葉月くんの感情ってお母さんが原因なんですか?」



「そうだね、その通りだよ。瑠伊とすごく似ているから。けどね、正直…あそこまで嫌われるなんて予想外なんだよ。批判されるのも分かってたけどさ、不本意だよあんなの。事実は消す事はできない、けどな理解できない事実があると思うんだよね。家族なのに、真実を理解する気持ちというのはないんだろうかって思うよ」



悪い事したから全てが悪い訳じゃないと、断言出来るものではない。



悪い事をしたから悪い人間という判断は確かだと言える。



でも、だからといって、悪い人間として決めつけ続けるのは、それは良い人間と言えるのだろうか?



それよりも、相手の人間にも過ちがあるという事があるというのに。



「葉月くんのお母さんは、事件の事をどう思っていたんですか?」



「…反省してるよ、すごく。例え酷い事されても復讐はしてはいけないって。けどさ、不良が全て悪いのかと言いたいよ。親戚が接しているやり方はおかしくて理不尽なんだよ。でも、結局悪いのは誰だったんだろうね」



゛悪いのは誰?゛



本人?



確かに本人も悪い。



けど、本当の意味では違うのではないのだろうか。



「周りの人間ですよね? 不良になったり事件を起こす人ってだいたい、何か欠落している人がほとんどじゃないですか? 嫉妬や愛情…そういうものだと思います」



美実さんも家族から愛情を貰えなかった人だ。



きっと理解してあげる人がいたら、そんな悲しい事が起きなかったと思う。



「そうだよ、理解する感情もないんだよ。興味がないから悪い人として痛めつけてやろうと思ってる。大人なのにやってる事なんか、瑠伊を傷付けた相手と変わんないじゃないかってね」



「だったら、本当の事を言った方が」



「聞こうとしないんだよ…」



「えっ」



葉月くんのお父さんは悲しそうな顔で呟く。



「何度、抗議しても聞かないんだよ。悪い人間に反省したって意味がない。悪い人間は悪い人間としてしか生きられないってね。仮にも家族なのに、真実を知って理解してあげないと、傷付いた感情なんて治るものも治らないと思うんだよ」



「……」



一緒だ、おばあちゃんとおじいちゃんと同じだ。



けど、その人達と違うのは理解しようとしない事だろう。



「世間からすれば悪い事をしたら悪い人間なのかな。じゃあ、瑠伊を傷つけた人間も喧嘩などで悪い事をしていても、そいつらは悪くないって事なのかな?
わざわざ抹消させて瑠伊だけを悪い人間にしたてて、あの子は最初から悪い人間にするなんて。こんなのあんまりだ。どうして人は自分を言いようにしか考えてなくて、理由なんてどうでも良いと思うんだろうね」



「………」



おじさんは泣きそうな感情で、親戚の不満を独り言のようにぶつけている。



この時、私は少なからず理解を始めていたのかもしれない。