「昔のあいつはすごく泣き虫で、非難されているおばさんに続けて非難される優弥は、それが耐えれなかったんだと思う。いつも泣いていたよ」



「それは、親戚の方に?」



「そう、『なんでお母さんは嫌われなきゃいけないの? 僕はなんで嫌われてるの?』っていつも泣いてた」



昔の葉月くんは泣き虫だったんだ。



私の知らない葉月くんだ。



「おばさんが亡くなった後も泣いていて、それでもおばさんは非難される事に泣いていて。
けど、それだけ素直で真っ直ぐな性格だったんだ」



(真っ直ぐ…?)



葉月くんは私にいつも真っ直ぐだと言ってくれていた。



「今は違うんだね」



「そう、歪んでて壊れてるからな」



「そっか。でも、どうして変わってしまったのかな」



やはり葉月くんを知るという事はとても難しい事なのだろうか?



「傷付けられたからだよ。1人の女の子に騙されたんだよ」



篠原くんははっきりと私に告げた。



「騙された?」



「あいつはおばさんと同じようにメンタルは弱くて、信じていた者に傷付けられた心に、元々親戚に嫌われている事と同調してしまったのだろうな」



「それで、変わってしまったの?」



「そう…まるで別人のように変わっちゃったんだよ」



(別人…?)



じゃあ、今の葉月くんは昔のような葉月くんではないということなのだろう。



昔の葉月くんは何も知らないけど、でも、篠原くんの言う言葉に、おそらく葉月くんは2度と元の性格には戻らないという事だ。



それだけは分かってしまった。