「その後は回復し、助けてくれた男性と結婚する事になったのだけど、けどまた彼女に酷い事が起きたんだよ」


「えっ」


それは、俺の身にも起きている事でもある。


「けど、その男性の親戚の人間は酷い人間だったんだ。彼女は有名だったんだ。暴力的で無差別に人を襲うという噂のデタラメが流れる程に。親戚の人間はその事を信じきって、彼女の本質やそうなった理由を理解しようともせず、ただ事件を起こして元から素行が悪いという理由だけで決めつけて一切耳を傾ける事はしなかったんだ」



そう、一切聞こうともせず、人格までも否定する。



それは、正しい事だと言えるのか俺には分からない。



確かに売ってくる喧嘩は買ってしまい、喧嘩ばかりで素行が良いとは言い切れない。


復讐して事件を起こしてしてしまったのは事実で、それは決して良い事ではなく怖れられるのは当たり前だけど、けど彼女に身に起きた事実を消して、全て彼女が悪いようにさせられているのはどう良いと言えるのだろうか?



「親戚の人間はその人を何と呼んでると思う?」


「えっ…良いことではない言葉?」


「そう、゛疫病神゛って言われるようになったんだ」


「えっ…なんで」


「多分…暴力的で事件を起こしたからじゃないかな」


つまり、それは俺に対しても同じなんだ。



「疫病神って親戚の方に酷い事したの?」


「してないよ、何も。噂だけで悪い人間と判断してるんだよ。その人の本質や理由なんてどうでもいい人達なんだよ。あった出来事でしか見ようとしない、そういう人なんだよ。そして、出来た子供にも疫病神の子供として罵られているんだよ」


「…それは変だよね。だって、子供は悪い事していないのに」


「うん、でも世間は信じるかな? 理解はしないんじゃないかな。だって、みんな噂だけを信じて真実なんて誰も理解しようとしないから、無駄なんだよ。美実さんも同じでしょ。だから、誰も理解されない。誰も信じてくれない。誰も味方なんていないから。鬱になっていくんだよ。……本当、誰を信じたら理解してくれるのかな」


美沙樹はそれでも信じるのだろうか?


もし、俺だったら信じれるかも分からない。