「きっと響ちゃんだって、誰も理解してあげれなくても、きっと理解してくれるはずだよ。響ちゃんはそういう子なの」



ああ、そうか。



天仲さんは美沙樹と同じなんだ。



美沙樹が真っ直ぐなのはこの人の遺伝なんだ。



「何なのあの人っ」



なんで、美沙樹の周りには良い人ばかりなのだろう?



零詩も父さんも良い人ばかりだ。



天仲さんの姿が見えなくなり、マンションが近付いた辺りで俺は叔母さんにある言葉を言った。



正直、その言葉を言ったらどうななるかなど分かっていて、むしろ打たれる覚悟の上だった。



天仲さんが言っていたあの言葉。



「あの、知ってます?クズって言葉を」



「はあ? それはあんたの事でしょうが、ク・ズ♪」



いつものように嘲笑うように馬鹿にするように、苛立ちさえも覚える程に、けど俺はそこまで良い性格をしていない。



「逆に清々しい程に痛いですよね」



「はあ?」



「最初から悪い人間は悪い人間のまま何ですか?
決めつけて本質を理解しようとしないで、傷付いた相手を更に傷付けるだけ傷付けて、あなたみたいな人がいるから、心が癒えないんじゃないですか?」



「…何? 自分が被害者になりたいの?痛いのはあんたの方でしょ? くふふ」



「本当に最低ですよね」



別にこの人に興味ないから罵倒されようがどうだっていい。



どうせ真っ直ぐだった幼い頃に植え付けられて傷付けられたから。



けど、母さんの事を悪く言うのだけは今でも耐えられない。



「はあ? はああ!?
こんのクソガキ! あんた今何言ったのっ」



叔母さんは般若のような面構えで、俺を打とうと手を上にあげる。



「うちの大事な息子の顔に何しようとしてんの」



また、助けるようにと今度は父さんが止めに入った。



「父さん…」



「大丈夫か優弥?」



「うん…」



そう言って、父さんは笑顔を浮かべた。