「でもさ、あれだよな…」



葉月くんはふいに声を出す。



「?」



「今でも俺の心は、君に聞かれているんだね。そう思うと、ちょっと嫌だなって」としみじみ感じるように言ってきた。



(あっ!?)



「ち、違うの!」



思わず慌てて起き上がる体勢で言い放ってしまった。



「うっ」



「ああ。そんなに慌てて言わなくていいから」



思わず力んでしまって頭がぐわんと目が回った。



冷静を保ってもう一度口を開いた。



「ごめん。その事なんだけど、なぜか分からないんだけど、葉月くんの事だけ全く聞こえないの」



「えっ」



「普通の人みたいに全然」



「そう、なんだ」



その時、一番驚いた顔を彼はしていたのだった。



「それでね」



私は言葉加えるように続けた。



「他人で聞こえないのって言うのが初めてだったから、すごく葉月くんの事が気になったの」



「そっか」



「うん…」



その時見せた彼の表情は、とても柔らかく優しそうな微笑みだった。



初めてこの力の事を誰かに話した。



家族にも話した事のない事だった。



しかも苦手意識を少し示していた男の子に。



その彼は決して嘘だと偽りの言葉を一切放つ事なく信じてくれたから。



今まで溜めていた重みがほんの少しだけ楽になった気がした。



結局、学校を1週間休んでしまったのだった。