「葉月くんはそれでいいの?」



「ん?」



美沙樹は不安そうな表情で俺に聞いてくる。



「嫌じゃないの?
嫌われているなんて、だってそんなの辛くないの?」



「………」



(うん、わかってるよ)



美沙樹が疑問に思うのは、普通は嫌われるなんて絶対に嫌だと思うはずだから。



「うーん、別に興味ない人間に嫌われてもしょうがないでしょ? どうでもいいし、良いんだよ別に嫌われてもどうせ味方なんて父さんかひいおじいさんくらいしかいないんだから」



自分が嫌われるのは別に気にならない。



いつも通りに嘘の笑顔で流しておけばいいから。



「俺はね、親戚に自分が嫌われる事に何の抵抗もないの。もう仕方ない事だから。だから、ほかの周りの人間に良い人だと認識させたかったのかもしれない。
まあ、今となっては意味がないからどうしようもないからね。けど、素を出すのも疲れちゃうんだよね。本当どうしようもないよね…本当」



「葉月くんがこうなってるのはお母さんが原因だったりするの?」



「ああ、まあそうだね。
だって、そっくりなんだよ、だから大嫌いなんだよ」



大嫌いで大嫌いで、でも、本当の意味では嫌いにはなれなかったんだ。



「お母さんの事が嫌いなの?」



「全然、むしろ好きだよ。
ただ、性格や心の感情が大嫌いなんだよ」



「嫌い…? 好きなのに? お母さんなのに?」



(そうだよ、好きなんだけど、大嫌いなんだよ)