「それは、幼い頃に実の父親に虐待されていたから、そのトラウマの影響もあってトラウマに病んだんだよ。
小さい子供って結局は大人には叶わないから、だから強くなろうとしたんだ。でも、その結果が悲劇を招いたかもしれない。彼女はそこまでメンタルは強い人間じゃなかった。だから結局また病んでしまったんだよ。
けどね、そんな親戚の中でも唯一手をさしべてくれた人がいたんだよ。それが、男性の両親と祖父だったんだよ。それが唯一の救いでまた救われたんだ。けど、彼の両親は結婚して1年後に事故に亡くなってしまってね。それを彼女のせいだと、祖父以外の親戚みんながみんな批難したんだ。まるでその人の存在自体が悪者のようにね。結局、良い事してもしてなくても、どちらにしても彼女は悪者として扱われるんだよ」



「……そんな」



理不尽だと思うよ。



父さんも同じことを言っていたから。



けど、父さんの両親が亡くなったのは、決して母さんのせいではないと思う。



「ねえ、その人って…」



「………」



気になって当たり前だ。



一体、誰の話だったのかと。



美沙樹の問いに俺は下を向きゆっくりと口を開いた。



「俺の母親の事だよ」



「えっ…」



告げた一言に美沙樹は大きく目を見張って俺を見る。



それもそのはずだ。



まさか、話していた人の話しが自分の母親だなんて誰が予想しただろうか。



「でも、葉月くんのお母さんは」



「うん、事故に亡くなってるよ。その時、親戚の人間は何て言ったと思う? 自業自得とか罰が当たったとか酷い事ばかりしか言わなかったんだよ」



「………」



美沙樹の事だから「なんで、人が亡くなったのにそんな言い方酷い」とか思うのだろう。



「葉月くんはずっと罵られているって事なの?」



「うん、そうだね。そうだけど、しょうがない事だから…だって理解しようとしない人間にどう理解を求めるの? 言ったでしょ、俺を知ることになるという事はそういう事だって」



美沙樹はおそらく、ここまでの事だと予想していなかったと思う。



けど、初めて親戚の人間に罵られた時は酷く辛い感情があったのを覚えているけど、でも最初に傷付けられた感情を埋め込まされたあの日以来、親戚の人間の罵りにどうでもよくなっていった。



言わせたい人間には言わせておけばいい。



身内だけど、俺からすれば興味のない人間でしかないから。