「ねえ、優弥くんはお母さんが嫌いじゃないんだよね?」


「えっ?」


なぜ、母さんの事を嫌っている思考になるのだろう?


「別に嫌いではないですけど」


「そうよね。この前言っていたから、ちょっと気になってね」


ああ、そういえば、この前言ったんだった。


「お母さんはどういう方なの?」


「えっどういう方って…」


一言で言えば簡単で、詳しく言えば難しいけど。


「まあ、こんな顔のした人です」


そう言って、自分の顔を指差した。


「?…へ?」


天仲さんは想定内の反応で疑問を浮かべる。


「えっと、それは優弥くんとそっくりだって事?」



「はい、全く一緒ですよ、顔は特に瓜ふたつなんで。俺は容姿に父親要素は一切ないんで」


そう、だから逆に嫌われているんだ。


父さんからすれば母さんがここにいるように見えるのだろうけど。


「じゃあ、お母さんかわいい人だったのね」


「まあ、顔はそうですけど」



「へー♪」


(うわあ、すっごい! って目で言ってるよ)


「ねえねえ、どうやったら、そんなかわいい顔の子生まれるのかな?」


「知りませんよ! 遺伝子割合とかじゃないですか?」


「うーん、そうよね。でもうちの人普通だからな」


結婚していたんだ、この人。


年齢からすれば普通だろう。


「でも、いいね! 全て似るって。あ、でも男の子ってお母さんに似る事って多いよね」


「……そうですね。まあ、俺の似かたは特殊ですけど」


正直、母親似って言われるのはあまり嬉しくない。


「どうしたの?」


「別に母親の事嫌いじゃないんですけど、あの人の性格は嫌いなんです」


別に母さんのことは嫌いじゃない。


だって、俺の母親だから嫌うはずない。


ただ、あの人が嫌いなのは心にある感情や性格だ。


それが嫌いなんだ。


俺の中にある感情も性格も母親とまったく同じで、ただ一つだけ違うのは鬱になっていないだけマシなだけだ。


けど、自分が嫌いなのは変わらないんだ。