「きゃあーかわいい〜」



女の子達が黄色い声を出している。



その理由はもちろん葉月くんだ。



今日は鈴凛学園の文化祭である。



時期もハロウィンと日にちが近いのもって、ハロウィンと合同の文化祭で、衣装も仮装する事になっている。



全員手作りという必須なのだけど、美実さんの事件で怪我してしばらく左手が上手いように動かせず、文化祭の日も近いのもあって特別に手芸の得意な子に作ってもらったのだった。



葉月くんの手にはまだ包帯が巻いてある。



ここあさんに聞いたのだけど、葉月くんの怪我は深くまでは刺さっていなかったが、皮膚がぱかっと割れていたらしく縫い合わせなきゃいけないぐらいの症状で10日ぐらいしたら皮膚はくっつくだそうだ。



というのを、ここあさんは葉月くんのお父さんに聞いたそうだ。



確実にはまだ10日は経っていないのだ。



少しずつだけど動かせるようになっていると、篠原くんに言っているのを聞いた。



「あのさ…確か俺狼の衣装作っていたと思うんだけどさ」



「あえて、猫にしたわ!」



「なんで?」



猫だけどキュートな衣装ではなく結構個性の目立つ衣装だと思う。



「パンクにしてみたわ。似合うと思ってね。
やっぱ葉月くんは何着てもかわいいわ」



「…なんか鎖いっぱいでうるさいんだけど」



「嫌い? ダメだった?」



葉月くんは着ている衣装を鏡で見合わせたり、ペタペタと触ったりしている。



「まあ別に嫌じゃないけど、面白いね」



「本当に? さっすが…葉月くん!
他の男子は絶対に似合いそうにないからね」



「おい、どういう意味だよ」



(でも、本当にかわいいなあ)



葉月くんは以前のような口調しなくなって、以前のように無理やり何か良いことしようと探す事をしなくなった。



男の子ぽい喋るようになったけど、良いことしようと探さなくなったけど、基本的には葉月くんは葉月くんだった。



目が冷たいように感じたり、以前のように笑顔を向ける事がなくなったけど、やっぱり葉月くんは優しい人だ。



「なんか葉月くん変わっちゃったよね?」



「うん、笑わなくなったし」



「篠原くんが言ってたんだけど、葉月くんの笑顔って作り笑顔とか言ってたよ?」



(作り笑顔か…)



じゃあ、私に向けていたのも作っていたものだったのか。



(それは、少し悲しいな)