「ねえ、優知らない?」



「コンテスト終わってからまたどっか行ったんだろう?」



「そうなのよね」



「……」



近くから葉月くんの名前が聞こえてきたので振りむくと、篠原くんと峰流さんとよく一緒にいる他の友達が、葉月くんの居場所の話をしていた。



「そういえば、優弥 最近また変なんだよな」



「変?」



「確かに優弥くんって変だよね、今」



「いや、確かにあいつ変だけど、そういう変じゃなくて」



篠原くん言っているのは別の意味での変なのだろう。



「ねえ、後 夜祭あるのよね?」



「えっあ、うん」



ふいにここあさんに声をかけられて、なんとなく返事をする。



「じゃあ、遅くなるのね」



(葉月くんが変…?)



私が気にしても仕方ない事で意味のない事だ。



「聞いてる?」



「えっ? あ、うん」



ダメだ、気になってここあさんの会話が入ってこない。



(私が探しに行ったってしょうがないんだもん)



あれから葉月くんと話せていないし、私が図々しく葉月くんの視界に入ったって意味ないから。



「…っ」



「響ちゃんてば」



「!」



ここあさんの声に篠原くんが私とここあさんの方に振り向いたけど、私は気付かなかった。



「あの、ごめんなさい。
用事あったのを思い出したので行ってもいいですか?」



「あら、そうなの?」



「本当にごめんなさい」



そう言って踵を返して廊下を駆けるように早歩きをする。



篠原くんが私が駆けるように早歩きをする姿を目で追っていたのも知らずに。