「なんか、葉月くん機嫌悪いのかな?」



「確かに…いつもの優しさはあるけど、口調がなんかね」



「怪我してるから、痛みでイライラしてるのかも」



クラスメイトの会話から葉月くんの様子が耳に入った。



「………」



葉月くんの様子がおかしくても、私が何かしても何の意味もない。



だって私は、葉月くんの友達でも何でもない、ただのクラスメイトだから。



普段から話していたらいいけど、別に話す関係でもない。



ほとんどたまにしか言葉を交さない。



昼休み、なんとなくな気持ちで屋上庭園へとやってきた。



うちの学園は校舎の屋上は立ち入り禁止だけど、一部の校舎の屋上は屋上庭園となっていて、そこだけは開放されているので自由に出入りできる。



「…あ」



円上のベンチに寝転んでいる葉月くんを見つけた。



「葉月くん…」



私はゆっくりと音を立てないないで近付いた。



「………」



寝転んでいる葉月くんの顔を覗かすと、目を瞑っていた。



(かわいい…)



いつもかわいい顔しているけど、瞼を閉じると更にかわいくて、まつ毛長いし肌も白いし綺麗な顔立ちしている。



「何?」



「!」



寝ていると思っていたけど、起きていて私に気付いていた。



むくりと起き上がり大きなあくびをする。



「座ったら?」



「うん…」



葉月くんの隣を少し開けて座る。



「はあ……」



葉月くんの口から淡いため息が聞こえた。



「ねえ、葉月くん。今日も手痛い?」



「まあ、昨日よりはマシだけど」



「そう…。
でも、機嫌悪そうってクラスの子言ってたから」



「…? 機嫌悪い?」



確かにいつもの葉月くんとは何かが違う気がしたの事実だ。



でも、私に対してはどちらかというと素だった。



「…別に機嫌悪くないけど。
手は痛いけどイライラはしてないよ?」



「えっ」



「ああ、多分…めんどくさくなったんだよ。
良い人を演じるの、だから辞めようと思って。
そうなると、逆に心配されるんだね」



(良い人? 演じてる?)



葉月くんは今まで自分を見せていなかったって事?



私はすぐに理解できるものではなかった。