願う先にある想い

「そんなの…わかんないよ」



「……」



「だって私は…葉月くんの事を何も知らないんだもん。私が知ってるのは優しい所だけだもん」



何も知らないから何も言えない。



結局は他人で他人でしかならない。



心の感情など本来なら聞こえるはずない。



けど、葉月くんは聞こえない。



だから余計に興味が出る。



けど、それ以上は踏み込めない。



「…そりゃあ、美沙樹が見てるのは表向きの俺だから。知って良いことなんてほとんどない。知らない方が身の為だよ。今まで俺は知らなきゃ良かったってどんなに思ったかって」



(知らなきゃ良かった…?)



その言葉にふと心原家の事や美実さんの事が脳裏にちらついた。



お母さんは私に知ってほしくなかったってここあさんが言っていた。



幽霊になって私を助けようとした時もそう言っていた。



けど、私は自分が知らない方が良かったなんて思わなかった。



むしろ、知れて良かった。



もっと早く知りたかった。



ここあさんの事ももっと早く出会いたかった。



美実さんの事を酷く怖がっているけど、もっと早く知っていればよかったって思ったんだ。



「あ、そろそろ昼休みが終わるな。先行くね」



「………」



私の返事を待つことなく、葉月くんはそのまま屋上庭園の出入り口の方へと向かっていく。




(そうなのかな?)



ふと1つの疑問が葉月くんに向く。



私は葉月くんの考えを否定する訳じゃない。



でも、それって自分を否定する事と一緒じゃないだろうか?



その瞬間、体が勝手に動いたように感じて、気が付いたら葉月くんの左手に触れていた。