翌朝、一昨日と昨日の事が嘘のように、天気の良いいつもの朝を迎えた。



「んー…ふう」



なんだか喪失感みたいな感覚を覚えた。



「用意しなきゃ」



いつものように制服に身を包み、いつものようにカーテンと窓を開け、いつものように鞄を持ってリビングに降りた。



「あ、おはよう、響ちゃん」



「おはようございます」



「お父さん、もう先に行っちゃったよ」



「うん、知ってます」



いつものようにトイレに行き洗面所で髪をセットして、いつものようにダイニングテーブルの椅子に座って朝食を摂る。



「いただきます」



「今日、警察に行ってお話しなのよね」



「そうなんですか、お父さんもされるんですか?」



「玲戸さんは昨日の内にしたみたいよ。私は今日にしてもらったの。私のは長くなりそうだから」



「そうですか」



「拒否もできたけど、でもどっちにせよ無理よね」



無理というのは、前科が付いている美実さんだからだ。



同じように彼女はまた家族に刃を向け、更にはおばあちゃん達の後に赤の他人の家族まで殺した容疑掛けられている身には、釈放されない事は確信されている。



だから、事情聴取を受けても意味のない事だとここあさんは分かっていてもなお応じたのは美実さんの為でもあったからだろう。



「では、行ってきます」



「うん、気を付けてね…」



「………」



私が拐われた事に気にしているのか、少し神経質になっているのだろう。



私が言えなかった落ち度もあるけど。



そういえば、結局おばあちゃんに言われたこと言えてない。



事後談になるけど、ちゃんと言おう。



ここあさんとお父さんに。



「ねえ、響ちゃん」



玄関のドアノブを手に掛けた所でここあさんが私を呼ぶ。



「何ですか?」



「敬語、別にいらないよ。家族なんだから」



(あ…)



「そうでしたね。あ、そうだね」



なんとなく敬語で話してた。



美実さんにもそうだった。



同じ家系だけど、なんとなく敬語でじゃないとダメな気がして、気を遣って話してた。



(そっか、そうだね)