結局、お父さんにほだされて会いに行くのを断念した。



会計を待っていると、トイレに行こうと向かうと近くの休憩スペースに葉月くんが疲れた様子で座り込んでいた。



「葉月くん…」



その瞬間、気が付くと私は葉月くんに近寄っていた。



「葉月くん」



「…美沙樹?」



「……」


葉月くんの姿に喜んだのも束の間、彼の左の手には包帯が巻かれていて痛そうに見えた。



「よかった、何ともなさそうで」



「隣いい?」



「うん」



葉月くんはさっきと打って変わってとても大人しく静かだ。


むしろ体調が悪そうに見えた。



「病気なの? 葉月くん」



「…うん」



その尋ねに葉月くんは静かに頷いた。



「でも、聞かない方がいいよ。幻滅するから」



(幻滅…?)



「よかったね、捕まえられて。多分、あの人一生出れないじゃないかな。それか…死んじゃうのかな?」



「………」



確かにどの道、美実さんは自由にならないのだろう。



なら白石さんはどうなるのだろう。



前科とか付いてしまうのだろうか。



「………」



「ごめんね、美沙樹…俺」



葉月くんは落ち込んだ浮かない表情で静かに謝った。



「結局、守れなかったよ」



「そんな事はないよ。だって来てくれたし」



「それは来ただけでしょ」



葉月くんから感じる雰囲気に違和感を感じる。



黒い部分が出ている気がする。



「俺はさ弱いから、ずっとずっとさ」



まるで葉月くんは自分を追い詰めているかのように、黒い部分に自分を封じ込めているようだ。