耳を済ますと風の音がする。



もうすぐ11月だからか、少しだけ肌寒いけど少し柔らかい穏やかな風の音だった。



ギュっとスカートの裾を握り、美実さんの様子を見計らい、お母さんの声の合図でしゃがみ込んでいた足を上げ地面を蹴るように美実さんの方へと向った。



その時、美実さんと接している葉月くんと空地の入り口付近に顔を出して様子を伺っているここあさんとお父さんと制服を着た男性がいた。



あれは警察の方かな。



そっか、もう情報が流れているんだ。



それは好都合だ。



私の姿に驚いているのか口を大きく開けていた。



葉月くんは目を見開いて私をまっすぐ見ていた。



白石さんの姿があったけど背後を向けているから私の姿に気付いない。



美実さんも後ろを向けているので気付いてない。



そしてー。



「だったら、見せて上げるわよ。あの子が殺される様を。どうせ動けないんだかー!」



「美実さん…」



美実さんのすぐ後ろにいたのだが、おそらく葉月くんに気を取られて気付いていなかったのだろう。



車の方へと振り向くと、私が目の前にいた事によほど驚いたのか、目を開き驚愕の目を向けられた。



「なんであんた動かけるのよ!」



「お母さんが助けてくれてるの」



「何言ってるの?」



「美沙樹…」



大丈夫、私はこの人を助けないといけないから。



「なんで! 優弥」



「何を!」



白石さんも私の存在に気づき、美実さんと同じような反応を見せて、葉月くんに近づき腕を引っ張る。



2人は私を動けないようにしていたんだ。



だからなのか、私が動いている状況に驚愕を受けているのだろう。