《ねえ、聞いて。今からやってほしい事があるの》



「やってほしい事?」



お母さんは私に何をしてほしいのか、なんとなく分かっていた。



「美実さんだよね」



《できるかな?》



できるできないかじゃない。



やらなきゃいけないんだ。



「でも、今の体じゃ痺れて上手く立てない」



《分かったわ、少しの間だけ力を貸してあげる》



「えっ」



そう言うと、お母さんはふっと消えたような感覚がし、その直後、突然体が軽くなった気がした。



(体が軽くなった?)



足が動かすと、先程までの痺れは嘘のように自由に動かせた。



「お母さん? お母さん…どこ?」



《大丈夫、大丈夫よ。
私の言うとおりにしたら大丈夫だから》



「うん…」



まだお母さんが側にいてくれる事に安心した。



(大丈夫…私がやらなきゃ。
おばあちゃんも言っていたから)



私がやらなきゃダメなんだ。



そう、ダメなんだ。




お願いがあります。



私に少しでいいので勇気をください。



美実さんに向ける勇気をください。



守られているだけなんて、もう嫌だから。



勇気をください。